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2018/03/05

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スペシャルコラムドラッカー再論

第112回

マネジメントの職務設計に関する四つの視点。

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第107回「職務設計の間違い。」から前回、第111回「管理限界の法則」の嘘?」までマネジメントの職務設計に関して見てきた。

これらを踏まえてドラッカーは、マネジメントの仕事は四つの視点から設計しなければならないと語る。

第一に、「職務」。果たすべき本来の機能、すなわち「仕事そのもの」がある。営業部長、製造部長、管理部長といった類の、継続的な仕事の役割だ。

第二に、「任務」。

「職務だけでは、マネジメントの人間に期待する貢献を明らかにはできない。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』、1973年)

職務規定は、組織にとっての「われわれの事業は何か。何であるべきか」についての答えに相当するものであるのに対して、任務とは、期限、担当者、評価を伴う目標のことだとドラカーは解説する。

「これらの任務が常に職務規定を上回ることが、一流の証明である。われわれが成文化できるものは、すでに行われたことだけである。職務規定がそれである。明日を作るために行われることは、常に、すでに行われたことを上回らなければならない。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

ドラッカーらしい言い回しだ。我々は成文化された職務規定範囲内のことしかやっていないなら、マネジメントとして不十分だ。あらゆるマネジメントの人間は、少なくとも年に1度は「組織全体の責任に対して、いかなる実質的な貢献をなしうるか」を考えなければならない。

第三に、マネジメントの仕事は「上、下、横との関係」によって規定される。

第四に、マネジメントの仕事は、「必要とする情報とその情報の流れにおける彼の位置」によって規定される。

「マネジメントたる者は、常に「仕事に必要な情報は何か。どこから手に入れるか」を自ら考える必要がある。その上で、それらの情報を提供する者に対し、情報の内容のみならず、情報の提供の仕方についてもマネジメント上のニーズを理解することを求める必要がある。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

ERPの導入などでよくある話として、導入したシステムがマネジメントにとって使えない、としてIT部門を責めたりする。
ドラッカーはこれに対して、問題はIT部門がマネジメント上のニーズを理解していないことではなく、マネジメントが自らのニーズについて考え、その結果をIT担当者に伝えていないことにこそあると指摘する。

「マネジメント上のニーズを満足させることが、IT技術者の責任である。しかし、そのニーズが何であるかを明らかにすることは、マネジメントの人間の仕事である。もちろん、マネジメントたる者は、上、下、横の誰が、いかなる情報を自分に頼っているかについても考えなければならない。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

マネジメントの仕事は、これら四つの視点が揃って初めて定義することができる。これは三角測量で位置を確定するようなもので、マネジメントの職務を設計するにはこの四つの視点全てが必要とされると、ドラッカーは述べている。

「これら四つの視点からの自らの仕事を知ることは、マネジメントの人間自らの責任である。マネジメントの人間に期待されるべきことは、自らの職務を書き表し、彼自身ならびに彼の部門が責任を負うべき成果と貢献の任務について提案を行い、他との関係を明らかにし、必要とする情報と他に貢献できる情報を明らかにすることである。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

我々マネジメントの人間にとって、自らの仕事についてこれら四つの視点から考えることが、最大の責任であり、この責任から逃れることはできないのだ。

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プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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