TOP スペシャルコラムドラッカー再論 「マネジメントの5つの仕事」に求められる力。

2018/01/15

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スペシャルコラムドラッカー再論

第105回

「マネジメントの5つの仕事」に求められる力。

  • エグゼクティブ
  • マネジメント
前回、ドラッカーはマネジメントの仕事には基本的なものが5つあると述べていることをご紹介した。

1)目標を設定すること。
2)組織すること。
3)チームをつくること。
4)評価すること。
5)自らを含めて人材を育成すること。

「それら5つの仕事が相まって、活力にあふれた成長する組織を生み出す。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』、1973年)

ドラッカーはこれについて「これら5つの仕事は、更に細分化することができる。その細分化した仕事一つひとつについて一冊の本を書けるとさえいってよい。そのうえ、これら5つの仕事に必要とされる能力が多様である」とも述べている。

目標を設定するには、「バランスの能力」が必要だ。
自らの信条の実現と事業業の成果とのバランス、将来のニーズと眼前のニーズとのバランス、期待する結果と入手可能な手段(リソース)とのバランス…。短期と長期、現実と理想、自己のこだわりと社員や顧客の欲求。我々経営者は常にこの「あちらとこちら」のバランスを如何に図るかに悩み続けていると言ってよいだろう。
目標の設定には「分析と統合の能力」を必要とする。

組織するには「分析の能力」が必要だ。
人材という希少な資源を、最も経済的に活用しなければならない。それと同時に、人を扱うがゆえに、正義の原則の元、終始「真摯たるべきこと」が求められる。
人材の育成という側面でも「分析の能力」と「真摯さ」が要求される。

チーム作り、つまりは、動機づけとコミュニケーションを行うことについては、(当然のことながら)「対人能力」が必要だ。
ここでは分析よりも「統合の能力」が要求される。公正さが主であり、経済性は二の次となる。分析的な能力よりも「真摯さ」のほうがはるかに重要である。

評価するには「分析の能力」が必要だ。
ドラッカーは「評価とは上からの管理ではなく、自己管理を可能にするためのもの」であると力説する。そして、この大原則を多くの場合破っていることが、マネジメントの仕事のうち、評価測定が最も貧弱な分野となっている原因だと指摘する。
「上からの管理手段としているかぎり、評価はマネジメントにとって不毛な分野であり続ける」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

目標設定、組織、動機づけとコミュニケーション、評価、人材開発は、マネジメントの仕事の形式的な分野ではあるものの、これらの分類はあらゆるマネジメントとその活動に適用することが可能だ。
もちろん、目標を設定することができるだけでマネジメントになれるわけではない。狭いところで糸を結べるだけで外科医になれる訳ではないのと同じである、とドラッカーは言う。しかし、その上で、ドラッカーはこう述べる。

「目標を設定する能力がなければマネジメントにはなれない。糸を結べなければ優れた外科医になれないのと同じである。糸を結ぶスキルを向上させれば、それだけ外科医として進歩するように、マネジメントもこれら5つの基本的な仕事すべてについて自らの能力と仕事ぶりを向上させれば、それだけマネジメントとして進歩する」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

まずはこの5つの基本を抑えよ。そうすればマネジメントとしての道は拓ける、ということだろう。

プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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