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2017/10/23

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スペシャルコラムドラッカー再論

第95回

企業・組織が社会に与えるインパクトの処理と社会への貢献を、改めて考えるべきときがきている。

  • エグゼクティブ
  • マネジメント
CSR(Corporate Social Responsibility)、SRI(社会的責任投資)から、昨今は更にCSV(Creating Shared Value、共通価値の創造)なども言われ、企業活動と社会的責任の接合についても日常的に言われるようになっている。
それは何も、今になって始まったものではなく、ドラッカーによれば19世紀から言われていることだと言う。工業社会が勃興し、組織社会が確立されて以降の社会テーマと言えるだろう。

元来、企業の社会的責任とは、企業人がその本業以外の場において、いかなる社会的な貢献をすべきであり、なすことができるかという点に置かれていた。
しかし1960年代の始め頃から、その様相は変わり始め、企業活動そのものが社会に与えるインパクトを論ずるものになったのだ。

社会的責任の問題は、二つの領域で生ずるとドラッカーは述べる。

(1)第一に、自らの活動が社会に与えるインパクトから生ずる。
(2)第二に、自らの活動とは関わりなく社会自体の問題として生ずる。

「いずれの組織も社会やコミュニティの中の存在であるがゆえに、マネジメントにとって重大な関心事たらざるをえない。しかしこの二つの社会的責任は、まったく違う性質のものである。前者は組織が社会に対して行ったことに関わる責任であり、後者は組織が社会のために行えることに関わる責任である。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』、1973年)

現代の組織は、社会に貢献するために存在している。
それは社会の中に存在するがゆえに、企業の活動、組織の活動が社会やコミュニティと切り離されることはないし、組織が社会に与えるインパクトは、それぞれが自らの存在理由とする社会への貢献(=事業や企業の存在定義や具体的に提供される財・サービスの価値)にのみ留まることはありえないのだ。

分かりやすい例としては、企業活動の結果発生する公害問題や労働者に対する人権的問題などが、すぐに想起できるだろう。
昨今のテクノロジーの進展に伴っては、その利便性が侵食するプライバシーの問題なども看過できなくなりつつある。

「マネジメントが社会の病をつくったわけではない。しかし、社会の健康はマネジメントにとって不可欠である。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

ドラッカーは既に1970年代に、いま注目されているCSVやSRIについて述べていた。
いま、改めて我々は、このことについて深く考えながら、事業活動を押しすすめなければならない。

では、組織や企業が社会に与える(与えてしまう)インパクトについて、具体的にどのように処していかなければならないのだろうか?
次回、そこに光を当ててみたい。

プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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