2023/12/21
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ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術
第177回
部下を育てる、Z世代攻略コミュニケーション法
- キャリア
- ビジネススキル
- 野本 理恵氏 株式会社Nomoto Consulting 代表取締役
理解しているようで理解できていない「コミュニケーション」
実際のところ「コミュニケーション」という言葉を私たちは聞き飽きています。このテーマで書籍もあれば、研修もあります。「そんなの分かっているよ」という声が聞こえてきそうですが、一方でここがネックになって多くの若者は3年たたず転職をしていく現実を見て見ぬふりはできません。私自身が依頼された新入社員研修で必ず話すことがあります。「学生時代と社会人のコミュニケーション」が全く違うと。学生時代に友人関係に悩んだことがない人がなぜ会社に入ったら人間関係に悩んで仕事が嫌になったり転職を決意したりするのか。
学生時代の人間関係
随分前になるかもしれませんが、自身の学生時代を思い出してみてください。例えば年齢は同じ、高校、大学であれば学力水準も同等でしょう。公立高校であれば学区などのエリアが同じ、私立であれば親の所得水準も一定以上かもしれません。部活に入れば同じスポーツをしている、趣味が一緒、同じアイドルのファン。何が言いたいかといえば「何かしらの共通項」があります。それが学生時代の人間関係です。振り返れば、クラス全員と毎日コミュニケーションをとる必要はなく「気の合う友達」と何となくつるんでいれば平和に今日という1日が終わります。それが学生時代なのです。
会社の人間関係
一方、会社に入社したら年齢、性別、価値観、全て違います。親子ほどの年齢差も当たり前です。そもそも「共通点が全くない」という大前提からスタートするのが会社の人間関係です。笑い話でいつも話すのは「もし、学生時代に同じクライメイトだったら絶対に友達にならない人たちと一緒に仕事をして成果を出すのが会社」というところです。このように考えてみると「分かり合えない」という大前提が社会に出てからのコミュニケーションの基本です。コーチングやら若手指導のノウハウでは逆に若手から見ると上司が部下に媚びているように見えてしまい、かえって信頼関係が築けなくなってしまいます。
分かり合えないという前提に立てば、もっとコミュニケーションも見直すところが出てくるのではないでしょうか。よく幹部研修でアドバイスするのは「腰を据えてじっくり」よりも「短い時間で回数を多く」という話をします。
例えば、1時間で月2回話すより、15分の簡単な立ち話を8回話すということです。これは今の若者はYouTubeなどのショート動画で簡単に短時間のコンテンツで情報を得ることに親しんでいます。長時間面談をされるとそれだけで飽きてしまう、そして何か説教されているという感覚に陥ってしまいます。どんなに良い内容の話だとしても時間の長さだけでそのように感じてしまうのです。
挙げればきりがないですが、このようにそもそも育ってきた環境も価値観も違う世代が集まって成果を上げるのが会社です。これはどちらが良い悪いというわけでなく、「違うことが良いことだ」という前提で仕事をしていくことが必要です。
時代が変わってももちろん変わらない普遍的に大切なものはあると思います。ただ一方でその2倍、3倍の変えるべきところがあるということを、幹部も若手も双方が認識して会社というフィールドに立つことが大事なのです。
最後に社会に出て1番大切なマインドは「正義の反対は悪ではない」ということです。
どちらが正しい、間違いではありません。何となく言っていることが伝わらない。仕事への責任感がない、やる気が感じられない。それは彼らが間違っているわけではなく「若手社員からみた正義」がある、ただそれだけなのです。
今こそ、自身のコミュニケーションをバージョンアップする必要がありそうです。相手に向けている指を自身に向けるところから始めてください。
相手は自分の鏡。相手が聞いてくれないのは、あなたが相手の話を聞く姿勢ではないからかもしれません。「みんな違って、みんな良い」この原点に立てば世代を超えて同じ目標や成果に進む強い組織ができるはずです。 他の記事も読む。60秒で簡単無料登録!レギュラーメンバー登録はこちら >
■書籍情報
勝ち抜ける 経営者のキャリアデザイン 単行本(ソフトカバー)
著者: 野本 理恵
出版社:クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
価格:1,738円 ※この記事は、アイティメディア株式会社の許諾を得て
「ITmediaエグゼクティブ『ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術』」
の連載から転載したものです。無断転載を禁じます。
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