2023/05/25
1/2ページ
ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術
第154回
キャリアの話ができない職場に未来はない!? リーダーがいますべきこと ~人事課題の解決策「1on1」に期待される3つの役割
- キャリア
- ビジネススキル
- 池原 真佐子氏 株式会社Mentor For代表、兼、一般社団法人ビジネス・キャリアメンター協会代表理事。
前向きな展望をもてるようにする「キャリア支援」
その中でも一番大きな役割が、「キャリア支援」です。とくに現代の社会やビジネスは変化が激しく、良い意味で選択肢も多く、「キャリアの正解」というものがありません。私たちは、迷いや不安が生じやすい時代や環境で生きています。だからこそ、部下や後輩が自分のキャリアを前向きに形成できたり、「こういう仕事の仕方や考え方、チャレンジもあるんだ」と気づいたりすることのできる支援が、組織の中にあるかどうか。実は、これがとても重要です。
この話をすると、よく「社内でキャリア形成の話なんかしたら、優秀な人は辞めて、よその会社に移っちゃうんじゃないか」と心配する人がいますが、それはむしろ逆です。優秀な人に働き続けてほしいのであれば、優秀な人にこそ「働きがい」を感じてもらう必要があります。
部下(後輩)にとって、たとえ「いまの仕事が完璧な理想」ではなくても、「仕事に何らかの意味を見いだし、前向きなキャリア展望をもてる」というように、本人の大事な価値観と組織の目指す方向性や取り組みが少しでも重なることが重要です。もし、組織にそうした重なりを見いだすことができなければ、人は定着しません。
「ロール(パーツ)モデル」として経験をシェアする
2つ目は、「ロールモデル、もしくはパーツモデルの提示」という役割です。ロールモデルとは、考え方や行動、生き方の全般がお手本になる人物を意味します。部下(後輩)からすれば、「この人を参考にしたい」と思える存在です。
パーツモデルとは、考え方や行動、生き方の一部がお手本になる人物を指します。部下(後輩)にとっては、「部分的にでもこの人を参考にしたい」と思える存在です。
いずれにしても、1on1を行う側は、これまでの経験や知見に基づいて部下(後輩)に助言し、成長を後押しする存在です。ですから、1on1を受ける部下(後輩)が、1on1を実施する上司(先輩)に対して、少なからず「参考にしたい」「参考になる部分がある」と感じることは重要なのです。
ただし、だからといって完璧な「スーパーマン」「スーパーウーマン」である必要は全くありません。キラキラとした自分を演じる必要もありません。むしろ、失敗や挫折を踏まえた等身大のあなたの経験や知見が、相手の参考になることが多いのです。
キャリアの伴走者としての「エンパワーメント(励まし、勇気づけ)」
3つ目の役割は、「エンパワーメント(励まし、勇気づけ)」です。例えば、相手が一歩踏み出せるように励ましたり、自信がなさそうな相手の背中を押して勇気づけたりすること、対話を通じて、部下(後輩)が自分と向き合い、意思決定し、行動していくための勇気や自信をもてる状況を作っていくことも、キャリア1on1の役割なのです。
ですから、あなたは部下(後輩)にとって、「正解のない人生で、納得できるキャリアを形成していくための伴走者」であるということを、心に留めておいてください。
その上で、キャリア1on1を行うための「メンタリングスキル」というものがあります。話を深く聞き、その上で適切に助言や経験のシェアを行うためのスキルです。詳細は、拙著『女性部下や後輩をもつ人のための1on1の教科書』に譲りますが、働く人、一人一人が、安心してキャリアについて対話することができたら、そして、人生の先輩の助言や体験談、ストーリーをシェアしてもらい、新しい視点を得ることができたら、私たちは前向きに進んでいくことができます。そのためにも、リーダーとして、上司(先輩)として、1on1の役割とルールに対する理解を深めてもらえたらと思います。 他の記事も読む。60秒で簡単無料登録!レギュラーメンバー登録はこちら >
■書籍情報
女性部下や後輩をもつ人のための1on1の教科書 単行本(ソフトカバー)
著者: 池原 真佐子
出版社:日本実業出版社
価格:1,760円 ※この記事は、アイティメディア株式会社の許諾を得て
「ITmediaエグゼクティブ『ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術』」
の連載から転載したものです。無断転載を禁じます。
Copyright(C)ITmedia,Inc. All Rights Reserved.