2022/10/06
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ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術
第135回
できるリーダーはやっている! 部下のやる気を高める「対話」とは?
- キャリア
- ビジネススキル
- 伊庭 正康氏 株式会社らしさラボ 代表取締役
このように、すぐにアドバイスをするのではなく、部下が「どう考えている(心)のか」を“教えてもらう”スタイルこそが、対話です。今こそ、このコミュニケーションができてこそ、オンラインであろうが、短時間であろうが、部下の本心を知ることができ、また「自分で考える主体性」を宿らせることができるわけです。
「納得」は、命じることではなく、聞くことで生まれる
部下と面談をしていて、こんなことはないでしょうか。「つい、気が付けば、自分が話してしまう……」「次の質問が思い浮かばず、会話が続かない……」。
でも、そうだとしたら、今こそ“克服しておきたい弱点”と認識しておきましょう。
マネジメントの大家、ドラッカーはこういっています。
過去のリーダーの仕事は「命じること」だが、未来のリーダーの仕事は「聞くこと」が重要になる。
コミュニケーションで最も大切なことは、“相手の言わない本音”の部分を聞くことである。
解説しましょう。
言われたことしかしない「消極的な部下」がいたとします。「主体的になってほしい」と命じたところで、そう簡単に主体的になるはずはありません。そこで、「聞くこと」が必要となるわけです。会話のシーンはこんな感じ。
上司 「〇〇さんには、新人の面倒を見てほしい。どうかな?」
部下 「あ、はい……分かりました」
上司 「ありがとう。もし、あれば教えてほしいんだけど、面倒を見るにあたって、気になることはある?」
部下 「……えっと……いえ、特に大丈夫です……」
※まだ、聞きます。
上司 「安心した。新人と距離が近い〇〇さんだからこそ、教えてもらっていい? 面倒を見るにあたって、うまく行かなくなる要素があれば確認しておきたいのだけど、どんなことが想定されそう?」
部下 「そうですね……。私自身が忙しく、時間をとってあげられるかが不安です」
上司 「そうか……。どうしてなの?」
部下 「仕事が増えて、自分のことでも手が一杯になっているんです」
※まだ、聞きます。
上司 「そうか……。手がいっぱいなんだ……。ところで、その忙しさを解消できれば、面倒を見ることへの不安はなくなる?」
部下 「なんとも言えないです」
上司 「そうなんだ。それは、どうして?」
部下 「……」
上司 「………………(沈黙)…………………」
部下 「教える自信がないのです……」
あぶないところでした。「面倒を見てほしい」と指示しただけでは、うまく行かないリスクもあったでしょうし、部下のメンタルダウンのリスク、さらには離職のリスクにもなってしまうことが、容易に想像できます。何より、部下は全く納得していませんでした。
状況によっては、聞きだすのに30分ほどかかることもあります。しかし、この会話から、聞くことの重要性を確認できたわけです。もちろん、毎回、このような会話をすると面倒くさい上司になってしまいますので、「部下は不安を感じていないかな?」「任せた仕事を本当に完遂できるかな?」と上司として少し不安を感じた際に、「じっくり聞く」対話をしてみることをお勧めします。 他の記事も読む。60秒で簡単無料登録!レギュラーメンバー登録はこちら >
■書籍情報
できるリーダーは、「これ」しかやらない[聞き方・話し方編]
メンバーが自ら動き出す「30の質問」 単行本(ソフトカバー)
著者:伊庭 正康
出版社:PHP研究所
価格:1,650円(税込)
※この記事は、アイティメディア株式会社の許諾を得て
「ITmediaエグゼクティブ『ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術』」
の連載から転載したものです。無断転載を禁じます。
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