2021/06/17
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ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術
第107回
「疑う」からはじめる。激変の時代を生き抜く思考・行動の源泉
- キャリア
- ビジネススキル
- 澤円氏 圓窓 代表取締役
しかも、多くの企業では給与の階層が役職の昇降格と一致しています。このため、一定以上の給料を払うためには、役職につけることがマストになってしまっているのです。
マネジャーの資質とは「全体が見えている」こと
プレイヤーとして成果を出したことを根拠にマネジャーとしての役職を与える。これは経営上、最悪のリソース配置です。なぜなら、プレイヤーとしては優れていても、マネジメントの適性がない者が「○○部長」や「○○マネジャー」といった立場につくと、チームがむちゃくちゃになるからです。しかも、当の本人たちは名プレイヤーだった成功体験があるので、部下やチームメンバーに対して「おまえらなんでできないの?」などと言い出しかねません。
僕も若いころから、いろいろな上司を見てきました。そのとき、なにを「デキる」「デキない」の判断基準にしていたかというと、「全体が見えているかどうか」です。これができていないマネジャーは、思いのほかたくさんいます。
チームのいまの状態や向かう先といった全体像が見えていないと、細かいミスばかりが気になってしまいます。すると、すぐに「誰がしくじったか」を追及する一方で保身を図ります。
もっと悪いのが、部下と競争するマネジャー。絶対にマネジャーになってはダメなタイプです。部下の能力を認めなかったり、それに嫉妬したりするマネジャーは、マネジメントに100%向いていません。相手を認めたくないがために、必死に競争しようとするからです。
凡庸な選手がメジャーリーグ屈指の名監督に
メジャーリーグの名将トミー・ラソーダの話をしましょう。かつて野茂英雄投手が活躍したとき、ドジャースを率いていた監督です。監督としての成績は地区優勝8回、リーグ優勝4回、ワールドシリーズ優勝2回。もう文句なしのピカピカです。
けれども現役時代、ピッチャーとしてメジャーリーグに在籍していたときのラソーダは、なんと1勝もしていません。にもかかわらず、彼は監督としてメジャーの殿堂入りを果たしました。つまり、選手としての能力と監督としての力量はまったく別物だったということです。
「背中の名前のためにプレーするのではなく、胸の名前のためにプレーしろ」
ラソーダ監督の有名な言葉です。メジャーリーグでは、背中には選手個人の名前、胸にはチームの名前が入るのが一般的です。彼は選手に対して「チームの勝利に貢献すること」を求めていたということ。マネジャー(監督)としてリソースを最適に配置し、最高の結果が得られるようにチーム全体を見事に統率したのです。
二流監督ならいざ知らず、名監督は自分の思い付きやわがままで人を動かすことなどしません。ましてや、自分の成功体験を押しつけることなど論外でしょう。なぜなら、プレイヤーとしての実績は、マネジメントとまったく関係がないからです。
これから必要とされる資質は「未来志向」
「過去の成功体験だけで判断すると、マネジメントは100%失敗する」僕はそう考えています。もし過去に成功体験があるのなら、まず、その成功体験を疑うことからはじめてください。
時間の本質は、前にしか進まないという「不可逆性」にあります。あなたが好むと好まざるとにかかわらず、世の中は必ず変化していきます。この変化を受け入れられるかどうか、変化に対応できるかどうかが、これからの時代に大切なマインドとなります。
本書では、いま目の前にある仕事の本質を自分の頭でとことん考え、「別のもっといいやり方やアイデアがあるのではないか」と疑いながら、価値を創造していくためのヒントをたくさん紹介しました。新型コロナウイルスの出現以降、仕事の前提条件が変わり、僕たちはこれまで以上に「当たり前」を疑い、新たな価値をつくっていく必要があります。マネジメントにおいても、さまざまな思い込みが、じつにたくさん存在しています。本書を読んで、そんな思い込みを疑い、いい方向に変えていくきっかけにしてもらえればと思います。 他の記事も読む。60秒で簡単無料登録!レギュラーメンバー登録はこちら >
■書籍情報
「疑う」からはじめる。 これからの時代を生き抜く思考・行動の源泉 単行本(ソフトカバー)
著者:澤 円
出版社:アスコム
価格:1,650円(税込)
※この記事は、アイティメディア株式会社の許諾を得て
「ITmediaエグゼクティブ『ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術』」
の連載から転載したものです。無断転載を禁じます。
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