TOP 社長を目指す方程式 不透明な時代に、私たちはどうキャリアを考え動けば良いのか

2021/02/02

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社長を目指す方程式

第58回

不透明な時代に、私たちはどうキャリアを考え動けば良いのか

  • キャリア
  • ビジネススキル
  • マネジメント
 

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今回の社長を目指す法則・方程式:

井上和幸「目的型キャリアと展開型キャリア」

 
本稿執筆時点で、新型コロナの感染拡大が始まって丸1年。未だ収束の目処は立ちにくい状況が続いています。

このなんとも先の見通しにくい時代、当社には上司の皆さんからの「これからのキャリアをどう考えればよいのでしょうか」というご相談が一層増えています。今回はそのような上司の皆さんのお悩みにお答えしてみましょう。モヤモヤしたお気持ちが、きっと晴れると思いますよ!

 

「目的型」キャリアと「展開型」キャリア

私たちがキャリアについて考える際、「目的型」と「展開型」の2つの考え方があります。

「目的型」とは、未来のある時点にゴールを定め、そこを目指して進む考え方。「展開型」とは、足元のことを一生懸命やった結果、行くべきところに辿り着くという考え方です。

 

さて、いったいどちらが正しい歩み方なのでしょうか?

 

人にはタイプがあり、ゴールから遡った取り組み方が得意だという人もいれば、それは苦手で目の前の現実に向き合ってコツコツ歩みたいという人もいます。「夢に日付を」タイプと、「気まま波乗りサーファー」タイプですね。余談ですが、この2タイプが今回テーマのようなキャリア論バトルをしますと、お互い水掛け論となって絶対に結論が出ません(笑)。

 

アメリカの古いことわざに「散歩をしていて気がついたらエベレストの頂上にいた、ということはあり得ない」というのがあるそうですが、確かに、何かを目指して取り組むからこそできること、身につくことが多くあります。達成しようと思って奮闘努力し取り組むからこそ、商品やサービスが完成できた、売上目標を達成できたという結果が出る。これは確かな事実です。

 

このことからしても、その時々で「いま描いている未来、ビジョン、ゴール」がないのはまずいでしょう。それなくして成長したり、達成したりすることはできませんから。

 

しかし一方で、その目標に固執してしまうのはリスクです。

環境の変化や自分自身の成長によって、去年の目標は今年にも上書きされます。3年後、5年後、上書きし続けた結果、10年前と今とでは、自分が目指したい目標・ゴールは全く別のものになっているかもしれない。それで良いし、それこそが成長の証です。

10年前、20年前に描いた目標設定を、これだけ激しい時代の変化の中で、そのままの形で達成することが正解であるとは、いまや、ちょっと思いにくいでしょう。

キャリアに仕組むべき、「弱い」人脈

ところで、「弱い紐帯(ちゅうたい)の強さ」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。米国の社会学者、マーク・S・グラノヴェッターが唱えた説で、

 

「価値ある情報の伝達やイノベーションの伝播においては、家族や親友、同じ職場の仲間のような強いネットワーク(強い紐帯)よりも、ちょっとした知り合いや知人のような弱いネットワーク(弱い紐帯)が重要である」

 

という社会ネットワーク理論です。

 

特に、この理論の元となった調査が、「転職の際の有益な情報をどう得たか?」というもので、近い身内(強い紐帯)の情報よりも、さほど近しくない知人(弱い紐帯)からの情報のほうが圧倒的によい転職の機会につながっていたとのことです。

これは、おそらく読者の皆さんも感覚的に理解できるのではないかと思います。

 

近しい身内では、すでに知っていたり関係性が強かったりする情報に閉ざされてしまい、転職で今とは別の新天地を求めたい際に「飛び地」の情報を得難いのです。

自分が得たい「飛び地」の情報は、日頃、関係性はあるものの情報交換度合いのさほど高くないネットワークの人たちこそ多く持っています。ある意味これを仕組み化したものが、私たちのようなエグゼクティブサーチファームや人材紹介エージェント会社だと言えるでしょう。

 

自分の縁を広げ、幅・可能性を拡げるためには、外部のコミュニティを持つことが非常に重要なのです。

 

計画と、計画的偶発性と、日々を一生懸命やった結果

このことを知った上で、もうひとつ、次の理論をおさえておきましょう。それはスタンフォード大学のクランボルツ教授が唱えた「プランド・ハップンスタンス(計画的偶発性)理論」です。

 

これは「キャリアの8割は予想外の偶発的な出来事によって決定される」という論で、これを生かすか見逃すか、しっかり掴むかもまた、あなたの人生を大きく左右するのです。

 

さて、ここまでお話ししたところで、私なりのキャリアの正解は、「目的型」+「展開型」のミックス型です。要は、両方必要だということ。

 

目的なきところにストレッチ成長はありえないし、困難を乗り越えて何かを達成することは難しい。一方ではその目的に固執してしまうことは、非常に危険である。世の中はどんどん変化していくし、人は日々成長していく。目の前のことを一所懸命やることで、様々な出逢いやチャンスを手に入れることができるのです。

 

阪急電鉄や宝塚歌劇団をはじめとする阪急グループ(現・阪急阪神東宝グループ)の創業者である小林一三氏の言葉に、次のようなものがあります。

 

「将来の志は常に高く持ちなさい。そして、日々の足元のことをしっかりとやり遂げることこそが、その志に到達する最も近道なのだ」

 

将来の目標・志を持ち、日々、目の前のことに120%、150%情熱を注いで取り組む。

そうしていれば、あるとき 「弱い紐帯」と「計画的偶然性」によって、あなたのキャリアは次へ次へと切り拓かれていくことでしょう。

 

*         *         *


 

足元の業務に<いま・ここ>で邁進する。定期的に「自分のキャリアビジョン、キャリアプラン」を捨てて、更新・上書きする。すると、これまでには思いもしなかった可能性と未来が舞い込んでくる。これを繰り返し続けていると、ある日、自分が、数年前には思ってもいなかった場所にまで到達できていることに気がつくのです。

 

このコロナ禍の期間は自分刷新の良い期間だと捉えて行動すれば、なんとなく鬱々と毎日を過ごしている隣のライバル上司に差をつける、またとないビッグチャンスですよ!

   

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プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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