2020/11/26
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ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術
第91回
リモートワークの広がりで問われる『本物の「上司力」』
- キャリア
- ビジネススキル
- 前川 孝雄氏 株式会社 FeelWorks社長・株式会社働きがい創造研究所会長・青山学院大学兼任講師
アメリカの政治学者でリスク分析の専門家であるイアン・ブレマーは、この世界的コロナ禍は私たちの一生で最大の危機であり、今まで認識はしつつも、きちんと対処してこなかった課題が一気に噴出すると指摘します。そして、これからの1年半ほどの間に、5年から10年分の変化に直面することになると予言しています。
クイック・ウィン・パラドックスはコロナ禍以前に打ち出されていたコンセプトですが、部下の仕事ぶりが見えづらい焦りから、さらに起こりやすくなっているといえます。つまり、リモートワークの急速な普及によって、本質的なマネジメントの変革が、正に待ったなしの急務になったといえるのです。これを機に部下を持つ上司には、本来の役割を正しくとらえ直し自己変革を果たし、リモートワーク下でも上司の本領を発揮することが望まれます。
管理職から支援職へ~「本物の上司力」=「支援型マネジメント」を発揮する
上司が目指すべき方向を一言で言えば、管理職から支援職に変わるべきでしょう。リモート環境下でも、部下一人一人が自律的に仕事に向き合えるようにしていく、「支援型マネジメント」が求められているのです。そのためには、部下の「やる気」の構造を理解することが大切です。人の動機づけには「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」があります。「外発的動機づけ」は、いわば外側から働きかける動機づけです。例えば、職場の上司が業務目標を部下に一方的に押し付け説得すれば、部下は仕事を強制されるだけの自分に無能感を募らせます。そして、上司の統制と管理のもとに行う仕事には「やらされ感」がまん延していきます。
これに対し「内発的動機づけ」は、自分の内面から湧き上がる動機づけです。まさに「やる気」の源泉といえます。まず、部下に任せる仕事の目的を共有し納得させることから始めます。そして、自ら目標と計画を立てさせ上司が承認することで、有能感が得られます。決めた目標は部下の自己統制(セルフ・マネジメント)に任せ、上司は要所要所で支援します。こうして部下は任された仕事の当事者となり、「やる気」が醸成されていくのです(図3)。 この「支援型マネジメント」は、部下のキャリア自律を後押しすることになり、自律型人材として育て上げることにつながります。自律型人材とは、他者から管理・支配されるのではなく、自分の立てた規律や規範にのっとって働き続けられる人材です。とりわけウィズコロナの厳しい時代には、あらゆるビジネスパーソンが会社依存から脱却し、自らのキャリアを探求しながら、社会に貢献できる仕事を創出しやり遂げることが必要なのです。
以上のように、コロナ禍を背景として急速に普及したリモートワーク下において、上司には、部下を内発的に動機づけ、上司の日々の支援がなくても自律的・主体的に仕事を進めることができる環境づくりと育成手腕が強く求められています。そして、これは本来あるべき普遍的で本質的なマネジメントの姿であり、「本物の上司力」といえるものです。
この「上司力」をいかに理解し、どのように身につけるか、詳しくは近著『本物の「上司力」――「役割」に撤すればマネジメントはうまくいく』(2020年10月発行、大和出版)をご参照ください。
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■書籍情報
『本物の「上司力」 「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』
著者:前川 孝雄
出版社:大和出版
価格:1,650円(税込)
※この記事は、アイティメディア株式会社の許諾を得て
「ITmediaエグゼクティブ『ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術』」
の連載から転載したものです。無断転載を禁じます。
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