2020/10/08
1/2ページ
ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術
第84回
子育て世代支援からの地域創生
- キャリア
- ビジネススキル
- 藤代 聡氏 ママスクエア 代表取締役
ところが、実際はスタートと同時に、全国のショッピングモールと、自治体からの出店オファーが舞い込み、候補地の選択にかなりの苦労をした。特に、地方のショッピングモールと行政からの出店依頼が多く、当初の段階的全国展開とは異なり、地方への展開がより早期化する状況になった。実際に、候補地選定のために地方のショッピングモールを視察に回ると、集客やテナント誘致に苦労をしていて、シャッター商店街化しているところからのオファーが数多くあった。
ママスクエアの特徴として、ショッピングに来るのではないので、当たり前だが勤務日は、雨だろうが雪だろうが出勤する。それに対して、ショッピングモールは雨の日や雪の日は、ポイントを5倍にしたりプレミアを増したりしても集客に苦労をすることが多い。以前出店したショッピングモールで、大雪の日に閑散とした中で、ママスクエアだけは、全員が出勤をし、子ども達の歓声で賑わい、異質の空間となっていたことがある。
◆シャッター商店街モデル
上記のような実例から、シャッター商店街の活性化を図るために、ママスクエアを活用するという取り組みをスタートした。最初に実現したのが、神戸市と連携し、新長田商店街の活性化プロジェクトとして出店した、ママスクエア新長田店だ。想定通り、ママスクエアの若いママ達が商店街を往来する機会が増え、子ども達の歓声が聞こえるようになり、大変明るくなり、売れる商品アイテムも若返った。という評価だった。
◆百貨店内モデル
加古川駅の目の前に、昔そごうだったところを、現在ヤマトヤシキという地元の事業者が運営している百貨店がある。加古川市より出店の依頼があり、駅前百貨店の活性化、若年層の百貨店への集客などを狙って、ヤマトヤシキへ出店。狙い通りに、ママスクエアスタッフが百貨店内で働くことにより、若年層や小さい子ども達の集客に結びついている。
◆子育て世代支援からの地域創生
上記のような、直接的な出店により、a、働きたくても働けない母親層の就労支援
b、待機児童対策
c、地方の人手不足対策
d、ショッピングモール、商店街、百貨店などへの集客
e、空きスペースの有効活用
などを実現しているが、それ以上に重要な機能として、
A、地方家庭の所得を増やし、それによって消費を増やすことに結び付ける。
B、働ける主婦が、出産後も復帰できる職場を確保することにより、安心して出産できる状況を創出し、出生率の増加に結び付けることを実現している。
Aは、家計を支える男性の所得を短期間に飛躍的に増やすことは、難易度が高いが、主婦が働くことによって、家計としての所得を短期的に増やすことができる。ただ、それを実現するためには、子どもを預かる機能と、主婦が働きたいと思える仕事が両方存在しないと成立しない。主婦が働きたいと思える、高給与で魅力的な仕事は地方においては減っていく傾向にある。
ママスクエアのBPO業務は、東京などの都市部で、大手企業より業務を受託し、地方のママスクエア拠店に業務を振ることができ、地方の働きたい主婦にとっては、働きがいのある仕事を供給することが可能だ。また、そもそも子どもがそばにいられる施設なので、両方の要望をいっぺんに満たしている。
Bの部分は、まだ定量的な検証は進めているところだが、ママスクエアスタッフの産休、育休取得率は高く、また、年々増加している。産休、育休を取得しても、キャリアを断絶することなく復帰している。その状況が安心して、出産できるというマインドに結びついているという仮説をもっており、この仮説は引き続き、定量データを積み重ねて検証していきたい。
以上のように、ママスクエア社としては、a、b、c、d、eといった、出店によって、地域創生に直接的に寄与するとともに、もっと重要かつ根本的な、AとBも合わせて実現し、より効果的に地域創生に寄与していきたい。
他の記事も読む。60秒で簡単無料登録!レギュラーメンバー登録はこちら >
■書籍情報
『リクルートOBのすごいまちづくり2』
出版社:CAPエンタテインメント
価格:1,650円(税込)
※この記事は、アイティメディア株式会社の許諾を得て
「ITmediaエグゼクティブ『ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術』」
の連載から転載したものです。無断転載を禁じます。
Copyright(C)ITmedia,Inc. All Rights Reserved.