2020/06/10
1/2ページ
イマ、ココ、注目社長!
第92回
提案するのは不動産ならぬ「可動産」。世界中の好きな場所で豊かな暮らしを叶えたい。【前編】
- 注目企業
- 組織
- 経営
- 経営者インタビュー
- 宮下 晃樹氏 Carstay 株式会社 CEO
――ということは、トーマツは実質2年?
宮下 そうですね、2014年〜2016年の2年半勤めました。その間も、土日は外国人のガイドをずっと続けていて、相手に感謝をされると余計に「これを事業にしたい」という気持ちが強くなりました。
ちょうど2013年に東京オリンピックの開催が決まって、言葉こそまだ浸透していないもののインバウンドの需要が大きく見込まれ始めたタイミングでもありました。そこでトーマツを退職し、SAMURAI MEETUPSというNPOを立ち上げたんです。
――この団体は今もあるんですよね。
本田 はい。今も活動を続けていて、私が代表を務めています。もともと好きでやっていたことですが、次第に企業さんとか自治体さんからマーケティング調査の依頼など、仕事が舞い込むようになってきました。
当時は「インバウンド見込めるね」といっても、リアルに外国人と接点を持っている団体が少なかった。一方で私たちは、10人ぐらいの外国人ツアーとかをすぐに作ることができました。「お祭りをしたときにどうしたら外国人の方に来てもらえるか」といったマーケティング調査とか。
こういった仕事で得られる資金が、活動を続ける支えになりました。
――このときの組織はどうなっていたんですか?
宮下 私を含め、全員が本業をやりながら「好き」でつながっていました。いわゆるパラレルワーカーの集合体。ワークスタイルもリモートです。自分に都合が良い時間に好きな仕事を取って働ける、アメーバ組織でした。
――宮下さんは専業じゃなかったんですか?
宮下 私も個人事業主としての公認会計士の仕事がありまして。公認会計士の収入を得ながらNPOも運営していた感じです。 SAMURAI MEETUPSは一番多いときでメンバーが95人くらい。今も人数は増えたり減ったりしていますが、中心になって回す人はだいたい20人弱くらいでしょうか。
地方へ行っても自由で開放感あふれる旅を満喫するには?
――子ども時代の原体験を活かして、外国人をガイドするNPOを立ち上げられて。そこからCarstayの立ち上げへは、どういう流れで続いていくのですか?宮下 NPOの活動で大きな課題感を感じていたのが、地方を案内することでした。都心部に海外の人を連れて行くのは、メディアの情報も豊富ですし、比較的簡単なのですが、日本の原風景があるような田舎になった途端にものすごくハードルがあがるんです。
そのハードルの1つは情報。連れて行ったはいいけれど、Googleマップ以外の情報がなくて、みんな「どこに連れて行けばいいの…」と困る(笑)。もう1つがロジスティクス、いわゆる足とかモビリティの問題です。行きたいのに電車が廃線になっていてたどり着けないとか、公共のバスの運行が1日に1,2本しかないとか。
――旅の自由さとか開放感は味わえなくなりますよね、交通機関のスケジュールに縛られてしまう。
宮下 はい。それで、ガイドマップに乗っていないようなところをクルマで案内してほしいというオーダーも徐々に増えてきて…。
あとは、当時で3,000万人くらいの外国人が来日しているのに「外国人を1,200人アテンドしています」とか言っても、ぜんぜんインパクトながない。それで、そろそろスタートアップに舵を切ってもいいかなと。
――事業構想というか、勝算はどのくらいあったのですか?
宮下 課題感は存在しているのに、どこのスタートアップも解決しようとしていなかったので、ある程度の勝算は見込めていました。NPOだと人手の問題が出てきます。そこを、スタートアップで開発費をかけ、例えばスマホアプリのガイドで、誰もが行きたいところに導いてもらえるようなサービスにできないだろうか?そう考えたのが、Carstayを立ち上げた経緯です。2018年6月のことでした。
――創業メンバーは?
宮下 NPOの中で優秀だったメンバーを引き抜いて、3名で。
――もともとビジネスモデルに共感してくれたメンバーの中から力のある人たちを抜擢するのはナイススタッフィングですね。
宮下 いえいえ、振り返ると線でつながっているように見えるのですが、実際はかなりぐちゃぐちゃしていました(笑)。
(後編に続く )
(構成・文/阿部志穂)