2020/03/17
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社長を目指す方程式
第35回
自分のアイデアが一番?! 思い込みの罠と上司の腕の見せ所
- キャリア
- ビジネススキル
- マネジメント
- 井上 和幸 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
さて、翌週、その再提案をメンバーたちから受ける会議を開催。どんな案が出てくるのかな、と楽しみでもあり、半信半疑の気持ちもありつつミーティングに入ると、メンバーたちは得意満面で「井上さん、案をまとめてきました。これで行きたいです」。
提案を見せてもらったところ——。
なんと、それは、先週に私が「これでどう?」と言っていた案ではないですか!(もちろん枝葉の部分では多少の肉付けはされていましたが。)
思わず椅子から転げ落ちそうに〜と古いオチのようなことをしそうになったくらい、内心ズッコケはしましたが、ここはオトナの対応を見せまして、「おー、なるほど、いいじゃん!了解、ではこれで行ってみようよ」とGOサインを出したのでした。
◆人は「自分が作ったもののほうが好き」で、優れて見える生き物
行動経済学の第一人者で数々の関連ベストセラーを持つデューク大学のダン・アリエリー教授は、人は自分で生み出したアイデアに愛着を感じ、高く評価してしまうという実験結果に対して、「自前主義バイアス」と命名しています。
以前に当連載で「イケア効果」(労力をかけて何かをこしらえると、その作品に愛着を感じ、過大評価するようになる)に触れたことがありますが、このイケア効果を含めて、私たちは自分が作ったもの、自分の考えやアイデアが「好き」なのです(笑)。それが色眼鏡となり、他人のものより自分のもののほうを評価してしまう生き物なのですね。

それは私たちの愛らしいところでもありますが、こと、ビジネスの世界においては、この「自前主義バイアス」には個人単位でも組織や企業単位でも重々気をつけないと大きなリスクとなります。
それはもうお分かりかと思いますが、自分の案や企画への愛着が過ぎると、他の優れたアイデアを排除してしまうリスクがあるからです。商品、サービスで古今東西、「他社にしてやられた」ケースには、この自社での勝手な”敗れた案のほうが優れている”という思い込みバイアスに陥ったものも非常に多くみられます。あえて具体的に事例を引くことは控えますが、流通会社や外食、あるいはアプリ関連やSaaS会社などまで、同種のサービスが「我が社のものの方が競合よりも優れている」と言いながら負け組に陥ってしまっている例は枚挙にいとまがありませんよね。