2020/03/16
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私が経営者になった日
第37回
【鳥越淳司氏】大切なのは形ではなく、まず動くこと。(Vol.1)
- キャリア
- 経営
- 経営者インタビュー
- 鳥越 淳司氏 株式会社相模屋食料 代表取締役社長
●豆腐への愛と情熱が銀行を動かす。
入社して2年目。義父である当時の社長が大きな決断をする。第三工場の設立だ。売上32億円の時代に41億円の投資だ。家族にも猛反対された社長の背中を押したのが “私がやりたいんですけど”と言う鳥越氏だった。しかし当時の会社の業績では普通に考えて、そんな多額の融資を受けられる状況ではなかった。「私はそれまで銀行の相手をするというのをやったこともなかったんですけれども、“こういう夢があって、こうで、こうで”とひたすら『情熱作戦』で話に話しました。とにかく情熱で語って、スコアリングとかではなく、地元の企業をバックアップするのが地銀の役割だというふうに思っていただいた。その前の豆腐づくりで芽生えていた『どんなに追い詰められた状況でも、おいしくないおとうふは絶対に出さない。』という豆腐への愛で一生懸命やったのが良かったのかなと思います。」
経営の素人だったから良かったというのもあるという。
「借入金があって、32億円の売上しかなくて、さらに41億円も借りるなんて。おぼろげながら経営がわかるようになってきた今の自分からすると、よくやったなという(笑)。グループで300億円の売上に到達しようという今、410億借りるか?と。それは無理だなと思いますね(笑)。」
●自ら現場に入って破綻メーカーを救済。
今、鳥越氏が一番力を入れてやっているのが破綻メーカーの救済だ。債務超過を解消した会社もあるし、黒字化した会社もある。昨年も2社から、内1社は豆腐業界で大手と言われていた会社の救済を依頼された。「最初は拒否反応でいっぱいで、“俺ら、鳥越に何をやらされるんだろう”。“どうせ豆腐なんかわからないだろう”“数字といろいろなものをコストカットして、ガッシャンガッシャンやっていくんだろう“みたいな感じに見られます。だから、まず私は”数字なんかどうでもいい“”数字は結果で、もう潰れているのだから、しょうがない。だったら、美味しいお豆腐づくりをやろう“というふうに話をするのです。
それを言葉だけでは、誰もついてきてくれませんので。“ここをこうしよう”とか“ここをああしよう”とか“ちょっとおいで、こうやってやるんだよ”と言うと“マジですか”と。社長が現場に入って、やって、しかもわかっているというのがすごく新鮮なのでしょう。実はごまかしがきかないので、その内言い訳ができなくなるという苦しさも少し出てくるんですけど。それまでの間は、『わかっている・知っている』というのと、『おとうふに興味を持ってくれている、美味しいとマズイがしっかりわかる』というのが、彼らにとってみればすごく嬉しいのですね。」