TOP イマ、ココ、注目社長! 会社を救った宝「銀の糸」が広げるウェアラブルIoTの可能性。【前編】

2020/01/29

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イマ、ココ、注目社長!

第66回

会社を救った宝「銀の糸」が広げるウェアラブルIoTの可能性。【前編】

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もともとは祖父が立ち上げた、創業60年を超える西陣織の携帯メーカー。その家業の危機に3代目社長として立ち、今最も注目を集めるウェアラブルIoT企業にまでに変貌させた三寺歩氏。実は、父親から会社の窮乏を打ち明けられるまで、会社を継ぐつもりはまったくなかったと話します。

 

いまや、跡継ぎが新たな事業を興す“アトツギ創業”の関西代表として、そのサクセスストーリーがメディアに取り上げられることも多いミツフジ株式会社が、どのようにして息を吹き返したのか? その興味深いプロセスと、今や眼前に大きく広がっているスマート衣料メーカーとしての未来について語っていただきました。

(聞き手/井上和幸)

AGpossⓇ(エージーポス)」は独自の技術でナイロン繊維の表面に銀メッキがコーティングしてあり、三寺氏の父親である2代目社長・三寺康廣さんが開発しました。2002年に商標登録され、優れた抗菌、消臭、防電磁波効果などの性能を持ち、抗菌靴下や電磁波を防ぐアパレル製品などに使用され一時は売上が立ちましたが、化学薬品による抗菌剤が開発されるなど、2011年には売上が全盛期のわずか1割にまで落ち込んだといいます。

 

しかし、三寺氏が会社継承時に目を付けたのもまた、このAGpossでした。AGpossの取引先は主に大手繊維メーカーやアパレルメーカーでしたが、わずかな売上の中に研究機関が含まれていることに気が付きました。彼らはAGpossを利用したウェアラブルの研究をしており、導電性の高さを評価していたのです。アトツギ創業といってもゼロから新しい分野に進出したのではなく、もともと会社が持っていた宝を掘り起こし、時代のニーズにあったカタチで販売戦略を練り直したのです。そこに、IoT時代が到来。大手IT企業が続々とウェアラブル市場に参入するという幸運にも恵まれました。

 

ミツフジは、繊維の生産、供給にとどまらず、AGpossを電極として編み込んだウェアラブル端末から取得できる生体情報を可視化するクラウドサービス「hamonⓇ(ハモン)」を開発。ウェア、トランスミッタ、アプリ、アルゴリズムを一手に引き受けるワンストップ企業へと成長し、幅広い業界からの引き合いが後を絶ちません。

 

《hamonの活用例》

・医療 …予防医療やクラウドを使用した遠隔医療の実現を目指す

・スポーツマネジメント …スポーツ選手のパフォーマンス向上を目指す

・健康経営 …労働者のストレスなどを可視化し、多様化する働き方の実現を目指す

・育児・介護 …子供や高齢者の見守り、健康状態の把握、体調管理を目指す

写真左より、AGposs、hamon

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プロフィール

  • 三寺 歩氏

    三寺 歩氏

    ミツフジ株式会社 代表取締役社長

    1977年生まれ。京都出身。立命館大学卒業後、松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)に入社し、大手法人顧客を担当。その後、シスコシステムズ合同会社、SAPジャパン株式会社、ブルーコートシステムズ合同会社を経て、2014年9月に三ツ冨士繊維工業株式会社(現ミツフジ株式会社)に入社、代表取締役社長に就任。 代表取締役就任後、廃業寸前であった同社の立て直しに取り組み、導電性繊維AGpossに特化したビジネスモデルに移行。2016年12月には、AGpossを使用したウェアラブルプラットフォームhamonを発表、発売を開始した。アパレル産業を始め、様々な企業が新規事業開発に取り組む中、IoT事業の立ち上げ支援を実施。 ワコール、キムラタンなどの企業が同プラットフォームによるIoT事業の展開に取り組む。 国内の自治体の未病対策、過疎・高齢化地域などに関するプラットフォーム作りに参画し、 福島県川俣町、島根県松江市、奈良県生駒市など7自治体で連携協定を含めた取り組みを実施。また、グローバル基盤としてIBM Maximo Worker Insightを採用し、グローバル企業の現場、従業員の安全管理の迅速な立ち上げの提案を行っている。

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