TOP ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術 「何でも皆で決める上司」がリーダー失格であるワケ

2020/01/23

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ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術

第59回

「何でも皆で決める上司」がリーダー失格であるワケ

  • キャリア
  • ビジネススキル
  • 伊藤 羊一氏 武蔵野大学 アントレプレナーシップ学部学部長 Musashino Valley代表 LINEヤフーアカデミア学長 Voicyパーソナリティ
 

限られたリソースを、東北に最優先で回す。水だろうが電池だろうがコンロだろうが、まずは東北に最優先で送る。他の意見も当然ありましたが、それを押し切って東北を優先する、というのは、まさにリーダーとしての意思決定でした。正解かどうかは分からない。賛否両論ある。しかし、決めなければ何も動かず、事態は悪化する。そんな状況の中で「決める」のがリーダーの仕事です。

 

正解がない問題に直面したとき、リーダーはまずゴールを提示し、ゴールに向けてのストーリーを決めて行動に移します。その過程では必ずコンフリクト、衝突や利害対立が起きますが、意思決定によってそのコンフリクトを乗り越えてゴールに向かう─それがリーダーの仕事なのです。

 

◆決断できるリーダーは、必ず信念を持っている

では、こうした意思決定の決め手になるのは何か。正解がない中で、どのように意思決定すればよいのか。結論から言うと、自分が後悔しない決め方をする、すなわち自分が正しいと信じていることに従って決めるしかありません。つまり、「自分の信念に基づいて決める」しかないのです。「リーダーには信念が必要」としばしば言われますが、正解のない中で物事を決めるために必要なのが信念なのか、と私はこのとき心から納得したのです。

 

そうはいっても、私にそれほど大層な信念があったわけではありません。とにかく、「困っている人を助ける」ということが頭にあったくらいです。そう思ったのは、新潟県中越地震のときに何もできなかった後悔が尾を引いていたからです。単純で素朴な信念ではありましたが、信念がなければ意思決定はできません。悠長に議論をして、多数決をとって……というわけにはいかない非常事態であればなおさらです。

 

当時、震災後の対応については、「自分の後ろには誰もいない」状況でした。現場仕事のかたまりであったため、私より上の人に判断を仰ぐことが難しく、自分が決断していくしかなかったのです。大げさな言い方になりますが、「自分が決めなければ、その分だけ復旧が遅れる。日本にとって損失になる」と感じていました。その中で、私は44歳にしてはじめて、「リーダーとはこういうものなんだ」という視点を持つことができたのです。

 

44歳にしてやっと、「真のリーダーシップ」「信念の大切さ」に気づいた私は、その後ヤフーに行き、リーダーシップ開発に携わることになります。だからこそ、ぜひこのことを多くの人に伝えたい、知っておいてほしいと思っています。「リーダーシップとは何か?」と悩んだときには、このことをぜひ思い出してみてください。

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■書籍情報

『やりたいことなんて、なくていい。』
著者: 伊藤 羊一
出版社:PHP研究所
価格:1,540円(税込) 

この記事は、アイティメディア株式会社の許諾を得て
「ITmediaエグゼクティブ『ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術』」
の連載から転載したものです。無断転載を禁じます。
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プロフィール

  • 伊藤 羊一氏

    伊藤 羊一氏

    武蔵野大学 アントレプレナーシップ学部学部長 Musashino Valley代表 LINEヤフーアカデミア学長 Voicyパーソナリティ

    アントレプレナーシップを抱き、世界をより良いものにするために活動する次世代リーダーを育成するスペシャリスト。2021年に武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(武蔵野EMC)を開設し学部長に就任。2023年6月にスタートアップスタジオ「Musashino Valley」をオープン。「次のステップ」に踏み出そうとするすべての人を支援する。また、LINEヤフーアカデミア学長として次世代リーダー開発を行う。代表作「1分で話せ」は60万部超のベストセラーに。

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