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2019/11/28

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ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術

第57回

60代でしなければならないこと

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  • ビジネススキル

 

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◆「正しい」に、こだわらない

60代は、不安になります。不安になるのは、60代だけではありません。20代でも不安です。昔は、60代だけが感じていた不安を、全ての人が感じるようになっています。いわば「60代症候群」です。   この本は、60代だけに向けて書かれた本ではありません。全ての「60代症候群」の人に向けて書きました。   不安になる理由は、「正しい」にこだわるからです。「今までの正しい」を、定年で奪われる気がするからです。   60代はあらゆるものから解放される年齢です。究極は、正しいことからの解放です。

時々、「中谷さんの大ファンで、本は1000冊以上読んでいます。昔の本と最近の本では真逆のことを書いていますが、どっちが正しいのですか」という質問をされます。

 

これに対して、私は「どっちも間違っている」と答えます。「どっちも正しいのではないんですか」と聞かれますが、どっちも間違っているのです。

 

全ては仮説です。今、この本に書いていることも仮説です。

 

全てのストレスは、どちちが正しいかと考えることから起こります。これがつらいのです。「どっちも正しい」と言うと、大体の人が「またそんなことを言って」という顔をします。

 

「どっちも間違っている」という気持ちでいると、「正しい」にこだわるストレスから解放されるのです。

 

美術史の流れで言うと、日本絵画は、桃山時代に狩野永徳が大和絵の土佐派を吸収しました。スポンサーだった徳川幕府が天下をとったことで、狩野派は国の中心画壇に入ることになりました。本流にいると、「正しい」からはずれることができなくなるのです。

 

京都本社だった狩野派は、徳川家康について江戸に移って東京本社になりました。京都本社は京都支社に格下げになりました。京都支社に残った狩野山楽は、逆に自由でのびのびした絵を描くようになりました。

 

今日、世界で評価されているのは、江戸に移った本社よりも京都支社の狩野山楽の方です。

 

これを見ても「正しい」ことはしんどいことだと分かります。「正しいことはラク」という思い込みが、正しいことのしんどさを生み出しているのです。

 

例えば、占い師さんに「これから○○の出会いがあります」と言われました。ここで「それはいいことですか。悪いことですか」という質問をする人が多いのです。

 

今、目の前ではいいことでも、それが悪いことにつながることもあります。その悪いことが、結果としていいことにつながることもあるのです。「いいこと」と「悪いこと」という枠組みは、運命の中にはありません。客観的に、ただそれが起こっているというだけです。

 

50代までは、人間は全て優等生で、正しいことだけを追求してきました。60代で、やっと「正しい」から解放されます。「正しい」は十分にやってきたので、60代からの人生は「正しい」にこだわらずに生きていいのです。

 

だからといって、悪いことをすればいいということではありません。「正しい」から解放された向こう側に、もっと自由な広い世界があります。その世界に身をゆだねていけばいいのです。

 

◆道をはずれたところに、道がある

60代の不安は、定年で道をなくすという不安です。道にしがみつくと、ますます不安になります。

 

禅僧が描く「禅画」という絵のジャンルがあります。絵のプロではないので、のびのび自由に描いています。プロの画家は、みんな禅画に憧れていました。禅僧は長生きの人が多いのです。晩年になればなるほど、いい絵になります。死の間際に一番いい絵を描くのです。

 

禅の発想は、いかに自由になるかということです。本来、宗教は決まりごとや正しいことを突き詰めてきました。それと相反する世界に「禅」という考え方があるのです。間違えることを恐れないことが禅の精神です。

 

50代までは誰しも優等生で、「正解」とか「正しさ」を求めてきました。目に見えない「正しさ」の道がなんとなくあって、そこからはずれたところは道ではないと思い込んでいたのです。

 

実際は、道をはずれても、また道があります。道は無限にあるのです。それに気付くのが60代です。

 

プロフィール

  • 中谷 彰宏氏

    1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。博報堂勤務を経て、独立。91年、株式会社中谷彰宏事務所を設立。

    【中谷塾】を主宰。全国で、セミナー、ワークショップ活動を行う。【中谷塾】の講師は、中谷彰宏本人。参加者に直接、語りかけ質問し、気づきを促す、全員参加の体験型講義。

    著作は、『「理不尽」が多い人ほど、強くなる。』(きずな出版)など、1050冊を超す

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