TOP スペシャルコラムドラッカー再論 「多角化」という誘因と企業業績との関係性。

2019/11/25

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スペシャルコラムドラッカー再論

第196回

「多角化」という誘因と企業業績との関係性。

  • エグゼクティブ
  • マネジメント
  • 井上 和幸 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

 

「これまで長い間、多角化をすれば業績があがると信じられてきた。そのようなことはない、事実に反する。万能薬としての多角化の信仰が蔓延したのは、1950年代から60年代にかけてだった。だが当時の成功物語は、実は、多角化したものではなかったし、ましてコングロマリットのものでもなかった。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』、1973年)

 

ここでドラッカーが成功物語として挙げているのは、IBM、ゼロックス、ソニー、ホンダ、トヨタ、フィアット、フォルクスワーゲン、シアーズ・ローバック、マークス&スペンサー、サザビー、ベルテルスマンなどの、当時、明確な企業ミッションを持ち、一つの分野、市場、製品に卓越した企業だ。

 

本分を守れとの言葉は、常に正しいとドラッカーは言う。
組織は多角化していないほどマネジメントしやすい。シンプルであれば平明である。組織の全員が自らの仕事を理解し、自らの仕事と全体の成果との関係を知る。活動を集中する。期待を明確に規定することもできるし、成果を評価測定することもできる。

 

複雑でなければ問題も少なくなる。しかし、複雑になれば、原因を突き止め、適切な改善策を取ることも困難になる。複雑さはコミュニケーション上の問題を起こす。それだけマネジメントの階層が増え、調整役が必要となり、書類と手続きが増え、会議が多くなり、決定が遅れる。

 

「多角化を調和させ、一体性を保つための方法は二つしかない。一つは、共通の市場のもとに、事業、技術、製品、製品ライン、活動を統合し、それによって高度に多角化しつつ一体性を保つことである。もう一つは、共通の技術のもとに、事業、市場、製品、製品ライン、活動を統合し、それによって高度に多角化しつつ一体性を保つことである。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

 

時代の荒波と検証を既に受けている多角化戦略だが、それでもなお、企業はその成長と歴史を刻むに連れて、多角化の誘惑、多角化圧力に抗えないことが多い。
それはなぜだろう?  次回以降、具体的に見ていきたい。

 

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プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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