2019/09/19
1/2ページ
ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術
第47回
「起業家のように企業で働く」それは、いまや常識になった
- キャリア
- ビジネススキル
- 小杉 俊哉氏 合同会社THS経営組織研究所 代表社員
だからこそ、最初に述べたように、経営者は、社員には自律的に働いてもらい、自分で課題設定・仮説構築をしてくれることを熱望しているのだ。
◆起業家のように企業で働く人の例
会社に雇われている、使われている、と思って働くのではなく、会社のブランド、金、人、その他リソースを利用して自分のやりたいことができる、と考えて動いている人たちがいる。彼らは、やらされ感なく自分のやりたいことをやっていると感じられる。いままでとは風景が違って見える。そういう社員の比率が高い会社はおのずと活性化され、結果業績もよくなる。本の中では多くの人の例を紹介しているが、ここでは一人今回の「令和版」で新たに追加した人を紹介しよう。
この本を読んで自分の潜在能力を開花させた人で、ニトリの富井伸行さんだ。富井さんと出合ったのは今から4年前で、東京都ワーク・ライフ・バランスフェスタで私の基調講演を聞きに来てくれ、終了後に名刺交換をした。その際、本を読んで、自分がやってきたこと、考えていたことを全て表現している本だ、自分のバイブルだと思ったという話をしてくれた。とてもうれしかったのでそのことをよく覚えていた。
富井さんは、新卒でニトリに入社した後、仲間と中国で起業し、その後ニトリに再入社した出戻り組だ。それからはFacebookで友達になってつながっていたが、特にやりとりはなかった。2年後に連絡があり、「もうそろそろお会いしてもいい頃だと思ったので連絡をしました。ぜひランチをして話がしたい」ということだった。何がもういい頃なのか? 分からなかったが、喜んでランチの約束をした。
そして、ランチをしながら次のような話をしてくれた。
- 本を200回以上読み返し、コアとなる思考システムを学び続けた。
- 行動しては振り返り、読み返し、また行動する。それを繰り返す。まさに「信じる者は救われる」と思ってやった。
- 先生の本はとても読みやすいので、表面的に読み飛ばしてしまうこともできるのだが、じっくり読み返すと、都度発見がある。一つ一つの文章や項目の裏側に、先生の体験やコアの思考プロセスが流れており、全てが有機的につながっていることが分かる。だから、本の内容は、レバレッジの効く最高の武器になっている
- 2年前に会った時は一担当者だったが、こうした学びを続け、日々実践していった結果、社内でもトップレベルの業績を上げ続け、5段階昇格し、今や社長直轄の法人事業部トップのゼネラル・マネジャーになった。115人の部下全員に本を買って読ませ、自律的に動く組織になっている。
同時に、大きなクロッキー帳のようなものにマインドマップのように本の主旨をまとめたもの見せてくれた。これを毎日持ち歩いて、自分の行動と照らし合わせているのだそうだ。
その中心に大きく記されていたのは、起業家のように、ではなく、「起業家として企業で働く」だった。自分にはその方がしっくりくるから、勝手に変えさせてもらいました、ということだった。
それから2年たった。
「令和版」では、ぜひ富井さんのことを書かせてもらいたいと伝えたところ快諾してくれ、出来上がった本を送ったところ、以下のような近況が返ってきた。
- おかげさまで、現在全国38事業所、500人以上の部下を率いており、海外で複数拠点の運営やアライアンスの責任を負うようになった、と。
そして、この6月に執行役員に昇進した。
いかがだろうか。同じようなことはニトリでなくても、富井さんでなくても、やろうとすればできるのではないだろうか? 私の本が素晴らしいという押し売りをしたいのではない。どのような本でも、話でも構わない、自分が「これだ!」と思ったら、それを信じて、迷わず実践し、振り返り、また実践する。
自分の会社で起こっていることを自分事と捉え、自律的に行動する人は、最強だということをお伝えしたいのだ。
他の記事も読む。60秒で簡単無料登録!レギュラーメンバー登録はこちら >
■書籍情報
『起業家のように企業で働く 令和版』
著者:小杉 俊哉
出版社:クロスメディア・パブリッシング
価格:1,490円(税込)
※この記事は、アイティメディア株式会社の許諾を得て
「ITmediaエグゼクティブ『ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術』」
の連載から転載したものです。無断転載を禁じます。
Copyright(C)ITmedia,Inc. All Rights Reserved.