TOP 社長を目指す方程式 決める、そして動かす… 橋下徹氏が貫く、リーダーに必須の「実行力」

2019/06/25

1/4ページ

社長を目指す方程式

第16回

決める、そして動かす… 橋下徹氏が貫く、リーダーに必須の「実行力」

  • キャリア
  • ビジネススキル
  • マネジメント

橋下さんは府知事・市長時代、部下の職員たちには常々、「案を出すときには、三つ出して欲しい」と言っていたそうです。
最善と考える案、その対極の案、中間のマイルドな案の3パターンをいつも考えさせ持って来させていたとのこと。

「一つの案を持ってきて、メリット、デメリットを説明されても、その優位性が分かりません。一案でなく、その対極にある案、中間の案の三案を用意して、それぞれのメリット・デメリットを比較して説明してくれれば、判断しやすくなります。僕が案を検討するときに重視したのは、「比較優位」という考え方です。A案、B案、C案を比較して、B案が比較優位であるならば、B案のデメリットには目をつぶる、という考え方です。簡単に言えば、一番ましな案を選ぶということです。」(『実行力 結果を出す「仕組み」の作り方』)

政治の世界のみならず、ビジネスにおいても、「あれがダメだ、あそこが問題だ」とデメリットや問題点ばかりを指摘する評論家・コメンテータータイプが存在しますが、およそあらゆる事業やサービス・商品は、「より良い案、より良いやり方」でどんどん上梓し常に改善改革を継続していくことでこそ、完成・成功していくものです。

もちろん致命的な欠陥を排除していることや最低限以上の完成度はなければダメですが、一方で「パーフェクト」ばかりを追っていたら、いつまで経ってもローンチできず、先に競合に先行されたりもするでしょう。そもそも100%などということ自体がなかなかありえませんしね。

◆「比較する」ことで前向き・解決型リーダーになる

橋下さんがここで3案のパターンを決めており、その比較の中で「最もましな案」を選ぶというルールを設定していることが秀逸です。

代替案があることで、漠然となんとなく1案について検討するのではなく、しっかり論点比較できる。部下に考え抜いてもらった3案の比較で一番優れた案で決裁することで、部下も上司としても「最善策を選び、決定する」ことにスッキリ合意しやすい。

「日本の教育では、比較優位の思考が教えられていないため、新しい案、一つの案の問題点だけをあげつらい、批判するという、偏った議論があちこちで見られます。複数の案がはっきりと示されていれば、比較優位の思考をしやすいのですが、問題は新しい案が一つだけ出されたときです。確かに案は一つであっても、それは現状に対する案なのですから、新しい案についてのみ問題点を検証するのではなく、あくまでも現状との対比で、どちらのほうが優位か、どちらのほうがましか、という判断をすべきなのです。」(同書)

プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

    この登場者の記事一覧をみる