TOP ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術 どんな時代でも変わらない「働く」ことについての大切なこと

2019/06/13

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ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術

第34回

どんな時代でも変わらない「働く」ことについての大切なこと

  • キャリア
  • ビジネススキル
  • 古野 庸一氏 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 組織行動研究所 所長
 

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これからはキャリアは短いけれど、長い期間働くことを意識しなければならないだろう。そのためにはどのような心掛けが必要だろうか。

 

◆キャリアを考える際の2つのスタンス

社会人経験が豊富になっていくと、若手からキャリアの相談をされる機会が増えていくでしょう。   エグゼクティブの方であれば、なおさら有効なアドバイスが期待されるでしょう。   そこでの相談内容はさまざまですし、相談に対するアドバイスもさまざまです。 しかし、そのアドバイスのベースになるスタンスは、2つに分かれるように見えます。「生き残り」陣営と「幸福」陣営です。   技術革新のスピードが早くなっていき、仕事の内容が変わったり、仕事が無くなったりすることが予測されています。

ゆえに、一つのキャリアが短くなっていくといわれています。一方で、寿命が長くなっていきますので、働く期間が長くなることが前提になっていくでしょう。一つのキャリアは短いけれど、長い期間働くことを私たちは意識しなければいけません。だから、ちゃんと「生き残る」ことが大事であることが分かります。

 

しかしながら、「生き残る」ことだけでは、何のために生きているのか分かりません。私たちは「幸福」を味わいたいと思っています。

 

働く時間以外で「幸福」を味わうことも大切ですが、働いている時間でも「幸福」を味わうことができれば、人生の満足感は高まります。また、「幸福」と感じることなく働くことは、単に不幸になるというだけではなく、健康を損なうことにつながります。ゆえに、アドバイスのベースを「幸福」に置いている人もたくさんいます。

 

子供に対する教育方針を見ても、多くの親が「生き残る」ことと「幸福になる」ことを意識しているように見えます。「生き残ってほしい」という思いから、幼稚園のときから英語の塾に行かせ、小学校の高学年のときから進学塾に行かせ、いわゆるいい中学、高校、大学に行かせようとしている親がいます。一方で、「幸せになってほしい」という思いで、受験になるべく巻き込まれないように、のびのびとした学生生活が送れるように、自分らしく生きられるようにしている親がいます。

 

「生き残り」と「幸福」。ときに相反します。

 

「生き残り」とは、外部環境に適応することです。環境が変われば、それに合わせて自分を変えていくことが必要です。他の人との競争に勝たないといけません。生き残るために将来のリスクを勘案して、準備が必要です。今日の快楽を我慢して、明日の不安に向けての準備が必要です。どちらかというと、ネガティブな感情が支配しています。

 

一方で、外の環境に合わせてばかりいては「幸福」にはなれません。「幸福」の感情は、過去を振り返っての満足、現在の充実、未来への希望のように、ポジティブな感情で満たされていることが一般的です。自分らしく、リラックスし、時間に追われずゆったり、優しさに包まれていると形容されますし、他者との関係性も競争ではなく、協調であり、分かり合えるということになります(図1参照)。
図1:「生き残る」ことと「幸福」の対比

プロフィール

  • 古野 庸一氏

    古野 庸一氏

    株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 組織行動研究所 所長

    1987年東京大学工学部卒業後、株式会社リクルート入社。南カリフォルニア大学でMBA取得。キャリア支援に関する事業開発、NPOキャリアカウンセリング協会設立に参画する一方で、リーダーシップ開発、キャリア開発に関する研究に従事。2009年より現職。著書は『いい会社とは何か』(2010年 講談社現代新書)、『日本型リーダーの研究』(2008年 日経ビジネス人文庫)、『リーダーになる極意』(2005年 PHP研究所)、訳書に『ハイフライヤー 次世代リーダーの育成法』(2002年 プレジデント社)など。論文に「『一皮むける経験』とリーダーシップ開発」(2001年『一橋ビジネスレビュー』)、「プロ経営者になるための学びのプロセス」など。

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