TOP ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術 慰め・脅し・励ましよりも、生きる誘惑で、人は変わる

2019/06/06

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ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術

第33回

慰め・脅し・励ましよりも、生きる誘惑で、人は変わる

  • キャリア
  • ビジネススキル
 

はたらく人は、生きる誘惑に出会うことです。リーダーは、メンバーに、生きる誘惑を与えることなのです。

 

◆教えているのではない。人生を変えているのだ

リーダーは人を教える仕事をしています。同時に、リーダーは人に教わる立場でもあります。両方で意識しているのは、「自分は教えたり教わったりしているわけではない」ということです。

 

レナード・バーンスタインは、売れっ子作家になって、アメリカ人で初めてニューヨークフィルの総指揮者になりました。『ウエストサイド・ストーリー』で、彼の映画音楽もはやりました。ルックスもいいから、モテモテです。映画音楽・作曲・指揮・教育・講演・デートと、超多忙です。そんな中で、バーンスタインはサマーキャンプでティーチインをする機会がありました。

 

指揮者を目指す大学生ぐらいの若い子たちに授業をするのです。授業の途中で、「レナードさん、そろそろ次の仕事に行きましょう。時間もオーバーしているので、教えるのはその辺にしておいてください」と言われました。

 

その時、レナードは「I am not teaching. I am changing his life.(僕は教えているんじゃない。彼の人生を変えているんだ)」と言ったのです。それを言われたのが、今、NHK交響楽団の初代首席指揮者のパーヴォ・ヤルヴィです。

 

レナード・バーンスタインは、テクニックを教えているのではありません。「指揮は楽しいぞ」という誘惑をしたのです。どんな分野でも、難しさより楽しさを教えることが大切なのです。リーダーが、生きる誘惑をすることで、部下の人生をかえることができるのです。

 

◆生きる誘惑をしてくれるのが、すぐれたリーダーだ

いいリーダーに出会うことは大切です。これが「師匠運」です。いいリーダーは、人生を楽しんでいる人です。

 

リーダーを見ると、「こんなふうに人生を楽しむためには、どうしたらいいのか」「この人は、どうやってそんなに楽しんでいるのか」と思います。

 

これが教わるということです。「勉強しろ」と言うだけがリーダーではありません。「勉強しなければ人生つらいぞ」とか「格差社会で生きていけないぞ」とか、そんなことは一切言う必要はありません。

 

その人が楽しそうにしていたら、みんなはその人から何かを学ぼうとするのです。

 

中谷塾で、ダンスを習い始めた塾生がいます。パーティーのための練習として、女性をフロアまでエスコートしてもらいました。彼がドギマギしながら練習しているのを見て、ダンスをしていない男性の塾生が、「やっぱりダンスは難しいですね」とため息をもらしました。

 

そこで、私がお手本を示して、エスコートする通路でスピンして女性をクルッとまわしました。その時点で女性の目がハートマークになっています。女性だけでなく「難しそうだな」と言っていた塾生が、いきなり「やります」と言い出しました。「だって、あれができたら、なんでもありじゃないですか。そんなことができるんですか」と、驚いていました。

 

これが「あの人は楽しそうだな」ということです。

 

『エースをねらえ!』で、岡ひろみが県立西高に入った時は、テニスをしたいとは少しも思っていませんでした。そもそもテニスに興味があったわけではありません。お蝶夫人を見て、「すごい人がいる」と憧れて、「テニスをすれば、ああなれるんだ」と思ってテニスを始めたのです。

 

人に憧れるモチベーションは大きいです。テニスに憧れて、実際に始めると思ったより難しいし、最初は球拾いしかさせてもらえません。「これは違うな」と思って、やめてしまいます。何かを始める時に、そのことに憧れるのではなく、そのことを楽しそうにしている人に憧れる方が続くのです。

 

私の大学時代の恩師は西江雅之先生です。西江先生は博覧強記です。「この人の頭の中はいったいどうなっているんだろう。こんなふうになりたいな」と思ったことが、私の勉強するモチベーションになりました。

 

人間は楽しそうな人に憧れます。楽しそうにしている人が、リーダーなのです。

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■書籍情報

『生きる誘惑 自分を動かす61の工夫 』
著者: 中谷彰宏
出版社:きずな出版
価格:1,512円(税込) 

この記事は、アイティメディア株式会社の許諾を得て
「ITmediaエグゼクティブ『ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術』」
の連載から転載したものです。無断転載を禁じます。
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プロフィール

  • 中谷 彰宏氏

    1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。博報堂勤務を経て、独立。91年、株式会社中谷彰宏事務所を設立。

    【中谷塾】を主宰。全国で、セミナー、ワークショップ活動を行う。【中谷塾】の講師は、中谷彰宏本人。参加者に直接、語りかけ質問し、気づきを促す、全員参加の体験型講義。

    著作は、『「理不尽」が多い人ほど、強くなる。』(きずな出版)など、1050冊を超す

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