2017/09/11

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スペシャルコラムドラッカー再論

第89回

創造性への誤解。

  • エグゼクティブ
  • マネジメント
前回、ドラッカーは成果をあげるためには仕事に責任を持てなければならない、そのために

(1)仕事を生産的なものにしなければならない。
(2)情報をフィードバックしなければならない。
(3)学習を継続して行わなければならない。

の3つが必要だと述べていることに触れた。

今回はその1点目、「仕事を生産的なものにしなければならない」について見てみたい。

ドラッカーは、まず第一に、仕事を分析し、プロセス化し、管理手段を組み込み、ツールを設計することによって、仕事自体を生産的なものとする必要がある。このことなくして、仕事に責任を持たせようとしても無駄だ、という。それは単に、マネジメントの無能を示す結果に終わる、と。

「このことは、いわゆる創造性のスローガンに反する。人は束縛から解放されれば、専門家よりも優れた生産的な答えを出すとの考えは昔からある。18世紀にルソーが定式化する前からある。だがその正しさを証明するものはない。創造性といえども、基礎的なツールがあって力を発揮する。われわれの知るかぎり、正しい仕事の構成は直観で知りうるものではない。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』、1973年)

ただやみくもに自由にやらせることが、正しく効果的な創造性を発揮させる手だてではない、ということは、おそらく経営に当たる読者経営者の皆さんにとっても腑に落ちる、ある面、過去に痛い目を見た経験があったりすることではないだろうか。
正しい業務の組み立て、プロセス、アクティビティの土台を無視して、「自由」「我流」に社員を走らせることは、一瞬味わう「自由」の代償として、その後早晩陥る業績低迷という結果をもって、社員が上司や経営層に「泣きついてくる」という結果に至る。

かつて共産主義が、「資本家の搾取からの解放」を掲げ、共産党第一党が支配する国家がこれを収奪、国営化した結果、その各国の経済がどうなったかということは、歴史的に証明済みだ。

「1930年代のメキシコにおける石油産業の国営化、イランにおけるモサデグ首相によるあばだん精油所の国営化、ボリビアにおける錫鉱山の収用、チリにおける銅鉱山の収用は、すべてそこに働く従業員に支持された。それどころか熱烈に歓迎された。しかし、マネジメントの人間や技術者が追放され、あるいは自主的に立ち退いた後、生産性は崩壊した。その回復は、彼らの復帰を待たなければならなかった。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

時折、経営が従業員に「丸投げ」して成功したというようなエピソードを目にすることもある。
打開策が見出しにくいときに、経営者は、自らの支配を極限まで強めるか、現場に一式委譲し放棄するか、二極に走りがちだ。
このいずれもが間違っていることを、ここで我々は改めて気が付かされる。

仕事が生産性であるための(事業成果がしっかり出るための)ビジネスプロセス設計とインストールについて、経営者である我々は必ずコミットする責務がある。現場の自由とは、その正しく設計されたフィールド内においての自由なのだ。

プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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