2017/09/19
1/1ページ
スペシャルコラムドラッカー再論
第90回
情報のフィードバックと継続学習、そしてそれを成り立たせているもの。
- エグゼクティブ
- マネジメント
- 井上 和幸 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
(1)仕事を生産的なものにしなければならない。
(2)情報をフィードバックしなければならない。
(3)学習を継続して行わなければならない。
の3つが必要だと述べている。
1点目については前回触れた通りだが、「情報をフィードバックしなければならない」「学習を継続して行わなければならない」についてはどうだろう。
従業員が責任をもって成果をあげるためには、自己管理が可能である必要がある。自己管理するためには、自らの成果についての情報が不可欠だ。いわゆる、フィードバック、である。
リクルートの創業者、江副浩正さんも(ドラッカーの影響であったのか)、創業期から「フィードバック」について非常に重視されていた経営者だ。
業績スコアに関しては当然のことながら、各人の人物評価(サーベイ)についてや組織状況サーベイについても、執拗なくらいに計測し当事者にフィードバックさせる仕組みを導入していた。
私はそれがあのリクルートの独特の「主体的」「達成志向」の強い企業カルチャー・DNAを醸成したと考えている。
「もちろん働く者に与える情報は、情報として有効なものでなければならない。タイムリーであって意味のあるものでなければならない。仕事に焦点を合わせたものでなければならない。そして何よりも自らが使うものでなければならない。情報とは、人によって管理されるためのものでなく、自らを管理するためのものである。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』、1973年)
理想は、わざわざマネジャーや経営者が褒めたり叱ったりする必要をなくすことである。「すでにフィードバック情報によって、本人がしっているから」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)である。
そして第三の要件としてドラッカーが上げているのが、継続学習、だ。
「ここにいう継続学習とは、スキルのトレーニングとは別のものである。継続学習では、働く者は学んだことを生かして、自らの仕事ぶり、仲間の仕事ぶり、そして仕事の仕方を向上させようとする。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)
さらに、継続学習は、従業員間でのイノベーションに対する抵抗をなくす効果があり、また従業員たちが「陳腐化」する危険をなくす価値がある。
仕事を生産的なものにし、成果をあげられるようにするために、何を行ったか。そのためにはいかなる知識、ツール、情報が必要か。ニーズや方法や能力のレベルを上げるには、何をしなければならないか。我々経営者は、常にこれを全社に問い続けなければならない。「知識労働に携わる作業者集団は、学習集団とならなければならない」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)のだ。
これら三つの条件、仕事を生産的なものにし、情報をフィードバックし、学習を継続させることは、従業員たちに自らの仕事、集団、成果について責任を持たせるための基盤であるとドラッカーは言う。
つまり、それは、マネジメントの責任であり課題である、と。
しかし、それ以上に重要なポイントがあるとも、ドラッカーは述べる。
「これら三つの条件は、マネジメントの大権、すなわちマネジメントだけが一方的に取り組むべき課題ではない。もちろん、マネジメントが取り組み、決定をしなければならない。しかしこれら三つの条件すべてについて、実際に仕事をする者自身が作業に参画しなければならない働く者自身が初めから、仕事の分析、プロセス化、管理手段の組み込み、ツールの設計に参画しなければならない。彼らの知識、経験、ニーズが、仕事のあらゆる段階においてインプットとなる必要がある。現場で働く者自身が参画しなければならない。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)
仕事、作業集団、成果への従業員たちの責任は、仕事を生産的なものとし、情報をフィードバックし、学習を継続させて初めて実現される。
そして、これらすべてについて、そもそもの最初の段階から、従業員たち自身の参画を得ておくことが不可欠なのだ。