2017/01/16
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スペシャルコラムドラッカー再論
第57回
販売 vs マーケティング。
- マーケティング
- マネジメント
- 井上 和幸 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
「消費者の立場で、何が欲しいかを考え、提案せよ」
いまや、顧客視点、マーケティングの重要性は、改めて強調するまでもなく其処で言い尽くされている感がある。
それでもなお、企業課題の最重要項目にセールスとマーケティングが挙げられる。
「マーケティングは、その重要性が繰り返し説かれてきたにもかかわらず、ほとんどの企業で行われていない」(『マネジメント–-課題、責任、実践』、1973年)
なぜだろう?
ドラッカーは、マーケティングが販売に関係する全職能の遂行を意味するに過ぎないととらえている企業、経営者が多いからだと言う。
もしかしたら、まだまだ、販売/セールスとマーケティングの機能の違いを本質的に理解している企業や経営者が、少ないからなのかもしれない。
「実のところ、販売とマーケティングは逆である。同じ意味でないことはもちろん、補い合う部分さえない」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)
特に日本企業においては、マーケティング=広告宣伝、販促、と捉えられているところも依然多い。
当社がエグゼクティブサーチ事業で各社の関連部門の機能を拝見していても、「マーケティング部」が担っている動きが「広告宣伝管理」のみとなっている企業も多く見受けられる。
ドラッカーは、彼の著書全般において、執拗に繰り返しメッセージしていることが幾つかあるが、その中でも最たるものが
「顧客からスタートすること」
だろう。
販売が、「われわれの製品」からスタートする、「われわれの市場」を探すことから始めるのに対して、真のマーケティングは「顧客」からスタートする。
「われわれが何を売りたいか」ではなく、「顧客は何を買いたいか」を考える。
「われわれの製品やサービスにできることはこれである」ではなく、「顧客が見つけようとし、価値ありとし、必要としている満足はこれである」という。
「理想は、すぐにでも買いたくなるようにすることである。手に入れられるようにしてやれば、自動的に売れるようにすることである。販売や販売促進を不要にすることである」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)
我々は、苦しくなると、いきなり、「何とか売ろう」という努力に傾注しがちである。
しかし、苦しいときほど、「どうすれば、顧客は、販売や販売促進を必要とせずに、手に入れられるようにしてやれば、自動的に買いたいと思ってくれるだろうか」ということにこそ、徹底的に知恵を絞り行動すべきだということを、ドラッカーは諭してくれる。