2016/12/19

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スペシャルコラムドラッカー再論

第55回

企業の目的。

  • エグゼクティブ
  • マーケティング
  • マネジメント
日常、目の前の業務にまい進(というより埋没、だろうか)していると、そもそもの目的を忘れてしまうようなことも少なくない。

「なぜ、この業務はこの手順になっているのか」「なぜ、この商品にはこの機能をつけているのか」「なぜ、営業先はこことあそこなのか」等々。

当初正しかった手順、商品企画、取引先が、環境変化によってずれてしまったり、場違いなものとなってしまうことは多くある。
その変化のスピードが加速度を増しているのが、21世紀に我々がいるまさに、いま・ここ、だろう。

大企業病の前例踏襲主義を捨て去り、改めて、自社の存在意義を確認すべきときかもしれない。

ドラッカーは、そもそも企業は経済環境などから作られるものではなく、人間がその意図をもって作るものだということを、大前提として確認する。

「<マネジメントとは企業を市場へ適応させることである>との常套句ほど愚かなものはない。マネジメントとは、市場を見つけるだけでなく、自ら市場を創造すべき存在である。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』、1973年)

企業を創出するのは企業家という人間であり、その企業活動を永続させるために必要なものがトップマネジメントチームなのだ。

「企業とは何かを知るには、企業の目的から考えなければならない。企業の目的は、それぞれの企業の外にある。企業は社会の機関であり、その目的は社会にある。企業の目的の定義はひとつしかない。それは顧客の創造である」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

ドラッカーの最も有名なフレーズのひとつが、これだ。

人が潜在的に持っている欲求を、商品・サービスのかたちにして満たすことで有効需要が創出され、そして初めて、顧客と市場が誕生する。
逆に、企業がなんであるか、その存在価値を決めるのが、顧客である。

「顧客が価値を認め購入するものは、財やサービスそのものではない。財やサービスが提供するもの、すなわち効用である」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

顧客が求める効用を、財・サービスのかたちで提供する。

企業の目的は、顧客の創造だ。

「したがって、企業は二つの、ただ二つだけの企業家的な機能を持つ。それがマーケティングとイノベーションである。マーケティングとイノベーションだけが成果をもたらす。他のものはすべてコストである」」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

2017年を迎えるにあたり、年の瀬に改めて、この本質を自社に照らし合わせて点検チェックを行いたい。

プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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