2016/01/18
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スペシャルコラムドラッカー再論
第9回
マーケティングとは。
- マーケティング
- 井上 和幸 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
「企業の目的は顧客の創造である。したがって、企業は二つの、ただ二つだけの企業家的な機能をもつ。それがマーケティングとイノベーションである。マーケティングとイノベーションだけが成果をもたらす。他のものはすべてコストである」(『マネジメント』1973年)
ドラッカーをドラッカー足らしめ、世界にその銘を刻んだフレーズが、これだ。当コラムのタイトルにも引用している。
ドラッカーは、企業の目標はマーケティングとイノベーションを中心に設定されなければならない、と説く。
「事業が成果を得るのは、この二つの領域においてだからである。顧客が代価を支払うのは、この二つの領域における成果と貢献に対してである」(『マネジメント』)からだ。
「マーケティングとイノベーション以外の領域における目標は、すべてマーケティングとイノベーションの領域における目標の達成に資するものでなければならない」(『マネジメント』)。
さてでは、我々は、自社のマーケティング目標を、どう設定すればよいのだろう?
ドラッカーは、マーケティングの目標を、売上ではなく市場地位(市場内のシェア、ポジション)におかなければならないと言う。売上が伸びていても、市場の伸びを下回る成長しか達成できていなければ、いずれ市場内での限界的な位置に失墜する可能性があるし、逆に過度な寡占・独占は内部のイノベーション力を衰退させ構造変化への適応を危険なほどに困難にするからだ。
「市場地位について目標を設定するには、まず初めに、「何が自らの市場であるか」「誰が顧客であるか」「どこに顧客はいるか」「何を顧客が買うか」「何を顧客は価値と見るか」「顧客の満たされていない欲求は何か」を知る必要がある。そのような検討に立って、自らの製品とサービスを顧客の欲求との関連に照らして分析する必要がある」(『現代の経営』)
ドラッカーが具体的に挙げるマーケティングの目標には、以下の7つがある。
1)既存の市場における既存の製品についての目標
2)既存の製品の廃棄についての目標
3)既存の市場における新製品についての目標
4)新しい市場についての目標
5)流通チャネルについての目標
6)アフターサービスについての目標
7)信用供与についての目標
これはちょっと分かり難いが、市場を定め、その中でどのようなものを提供するか、それは既存製品で満たせるのか、廃棄し、新製品を投入する必要があるのか、それをどうデリバリーするのか、を定めよ、と言っていると、僕なりには理解している。
「「われわれは何を売りたいか」ではなく、「顧客は何を買いたいか」を考える。「われわれの製品やサービスにできることはこれである」ではなく、「顧客が見つけようとし、価値ありとし、必要としている満足はこれである」という。実のところ、販売とマーケティングは逆である。同じ意味でないことはもちろん、補い合う部分さえない」(『マネジメント』)。
セールス(販売)からスタートするのではなく、マーケティングからスタートせよ。作ったものをどう売るか、ではなく、顧客が求めるものを作り売る。
「何らかの販売は必要である。しかし、マーケティングの理想は販売を不要にすることである。マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、顧客に製品とサービスを合わせ、自ら売れるようにすることである。理想は、すぐにでも買いたくなるようにすることである。手に入れられるようにしてやれば、自動的に売れるようにすることである」(『マネジメント』)。
マネジメントが旨とすべきは、販売よりもマーケティングである、と語るドラッカーのメッセージを、日々胸に刻み、事業構築・改編・推進に当たりたい。