2020/06/10
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イマ、ココ、注目社長!
第92回
提案するのは不動産ならぬ「可動産」。世界中の好きな場所で豊かな暮らしを叶えたい。【前編】
- 注目企業
- 組織
- 経営
- 経営者インタビュー
- 宮下 晃樹氏 Carstay 株式会社 CEO
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「VANLIFE(バンライフ)」とは、キャンピングカーやバンなどの車を“住まい”と考えて、生活したり、遊んだり、仕事をしたりすること。暮らしと移動がセットになっているので、旅をしながら日常生活が送れるという、なんともそそられる自由で近未来的なライフスタイルです。
このバンライフを体験する機会を気軽に提供しようとサービス展開しているのが、Carstay(カーステイ)株式会社です。代表取締役の宮下晃樹さんは、学生時代に資格を取得し、公認会計士からキャリアをスタートしたという異色のトップ。起業を志した背景には、幼少期のグローバル体験がありました。
前半では、宮下さんが起業家という生き方に目覚め、自身が感じていた社会課題を解決するために“モビリティ×ツーリズム”という掛け合わせに可能性を感じるまでのお話をうかがいました。
(聞き手/井上和幸)
人生1回しかないなら、こんな生き方をしてみたい
――まずは、学生時代や社会人になりたての頃の宮下さんの夢やビジネスについての捉え方などからお伺いしてもよいでしょうか。宮下 起業すると決めたのは23歳くらいの時だったのですが、それまでは自分が将来社長になるなんて思ってもいませんでした。
中学受験をして慶応に入りそのまま大学まで上がったので、大学生になって初めて外部から入学してきた人と机を並べるようになった。すると、「アメリカに20年住んでいました」みたいな人が平気でいるわけです。
中高生時代は「自分は英語ができる方」と思っていたけれど、そういう人たちを目の当たりにして、自分の強みがわからなくなってしまいました。 ――大学在学中に公認会計士の資格を取って監査法人に就職していますよね。
宮下 はい。そんな経緯で「大学生のこの時点でゼロから積み上げて勉強できることはないか」と探していたときに、たまたま会計士の資格に出会いました。もともと数学も好きだったので、軽い気持ちで簿記の授業を取ったらハマった。
――難関資格ですからね。学生時代に取得できるってすごいですよ。
宮下 大学受験をしていないので、外部からの受験組ほど苦労もしていないというコンプレックスがありました。「もっと勉強しなきゃな」という焦りというか。
――では、起業とかベンチャーに目覚めたのは、社会人になってからなんですね。
宮下 資格が取れたので就職も決まりましたが、「将来こうなりたい」という思いが当時はあまりなかったんです。トーマツに入ってから、一般企業の監査だけではなく、海外の支援やスタートアップ支援の仕事もあったんですね。そこで、大学時代に出会ったことがなかった起業家の方やベンチャーで働く方の「この人達は、本当に自分たちのビジネスで世界を変えようと思っているんだなぁ」という思いを目にしてから、「人生1回しかないなら、こういう生き方をしてみたい」と憧れを抱くようになりました。
日本を訪れた外国人にハッピーな気持ちで帰ってほしい
――公認会計士資格と現在のいわゆる車中泊ビジネス。あまり接点がないように感じますが、その発想はどこから来ているんですか? 宮下 実は私、子どもの頃にロシアで育ちまして。ちょうどソ連からロシアに変わったばかりであまり治安は良くなかったのですが、私は近所の人たちに恵まれて楽しい幼少期を過ごすことができました。
多様なコミュニティの中でお互いの違いを受容しあう、「国籍は違うけど仲間だよ」といったアイデンティティが形成されていたので、日本で暮らし始めてからも海外から来た人を案内してあげるといったことはずっと続けていたんです。「せっかく日本に来たのだから、私がおもてなしをすることでハッピーな気分で帰ってほしい」という気持ちをずっと持っていた。それが、自分の軸としてひとつありました。
――なるほど。その経験が、起業しようとなった時にテーマとして浮かんできたんですね。
宮下 自分が他の起業家の方と何が違うのかを考えてみたら、やはり海外に住んでいた経験や、日本を訪れる外国人に対する気持ちの部分かなと思いました。せっかく起業するなら、やりがいを持って取り組めるテーマで起業したかったですしね。