2024/05/30
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ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術
第192回
大失敗しない「部下の育て方」とは…… どうするこれからの大企業管理職
- キャリア
- ビジネススキル
- 小川 実氏 一般社団法人成長企業研究会 代表理事 一般社団法人相続診断協会 代表理事 HOPグループ代表
あまりにもホワイトな環境は、若者にとってかえって“ぬるい”と思われ、離職理由になっているという。成長したい若者と、育て方が分からない上司の間で、非常に不幸なすれ違いが生じている。
厳しくてもダメ、ぬるくてもダメ。いったいどうすればいいのか?
「ホワイトすぎる会社を辞める若者」が話題になったのを覚えているでしょうか。ブラック企業は問題外ですが、一方であまりにもホワイトな環境は、若者にとってかえって“ぬるい”と思われてしまい、離職理由の1つになっているそうです。
“ぬるい”という言葉に込められているのは、成長できないことへの恐怖です。今は、長く勤めてさえいれば年功制で給与が上がっていく時代ではありません。ですから、生き抜いていくためには自分の成長が不可欠だという危機感を働く人たちは持っています。換言すれば、非常に高い成長欲求を秘めているわけです。
一方で、私が日々、経営者や管理職と組織作りについて話していると「人の育て方が分からない」と言う人が少なくありません。成長したい若者と、育て方が分からない上司の間で、非常に不幸なすれ違いが生じています。
厳しくしすぎてもダメ、ぬるすぎてもダメ。
部下を持つ上司は、いったいどうすればいいのでしょうか?私が考えるマネジメントのキーワードは2つ。「ビジョン」と「効力感」です。
人事評価制度こそ成長のドライバー
まず大前提として、私は「人の育て方が分からない」ことは、決して悪いことだとは思いません。なぜなら「自分は思い通りに人を育てられる」と断言できる人など、決して多くはないからです。
大切なのは「成長できる環境」を提供すること。そして、その土台が評価制度であり、賃金制度です。
私もかつては大手投資銀行に勤めていましたが、大企業にはしっかりした人事評価制度があり、同期という競争相手もたくさんいますから、実は人が育ちやすい環境でした。それは今の大企業も変わらないでしょう。
人事評価制度の本質的な価値は「継続的に利益を上げること」であり、そのために「人を成長させること」です。結果を査定するだけが人事評価制度だというのは間違いで、逆に結果を出してもらうための成長のドライバーなのです。
ではどうすれば人事評価制度をうまく機能させられるのでしょうか。先ほど述べた2つのキーワードで紐解いていきます。
管理職ならではのビジョンを持つ
1つ目は、ビジョンです。
ビジョンというと会社が経営計画で掲げるものだと思われがちですが、私は管理職もビジョンを積極的に発信したほうがいいと考えています。大企業の中の部署は、それぞれが中小企業のようなものです。部長や課長、係長はその中小企業のトップですから、部のビジョン、課のビジョン、係のビジョンをぜひ語ってください。
なぜなら、それが部下の成長を後押しするからです。経済が右肩上がりだった時代を経験していない世代はモノやお金に対する執着が薄いとよく言われますが、その分、働く目的がピュアに「社会性」や「自分らしさ」へと向かっています。
確かに会社にはビジョンがあり、就活時はそのビジョンに共感して入社してくる人もたくさんいるでしょう。しかし現場で目の前の業務に忙殺されるにつれて、何のために働いているのか分からなくなっていきます。