2022/11/17
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敏腕キャピタリストの着眼点
第36回
優れた技術シーズを事業化につなげる。大学発ベンチャーがつくる未来。【前編】
- 経営
- 組織
- 伊藤 毅氏 Beyond Next Ventures株式会社 代表取締役社長
今回の「敏腕キャピタリストの着眼点」は、Beyond Next Ventures株式会社代表取締役社長の伊藤毅氏にご登場いただきます。同社は、大学研究発のベンチャーを中心に革新的な技術を持った企業に投資するベンチャーキャピタルです(2014年創業)。
伊藤毅氏は、東京工業大学大学院理工学研究科で化学工学を専攻したのちジャフコに入社し、産学連携投資の責任者を務められ、その後独立して起業し未来を創造する起業家を支援しています。伊藤氏に、大学発ベンチャーに投資する意味、ベンチャー経営者を見る際のポイント、いま注目すべき投資先企業の技術などを伺いました。前後編の2回にわたってお届けします。
(聞き手/井上和幸)
ジャフコに入社して多くの経営者と対峙
井上 伊藤さんは、学生のころから現在のような領域に興味があったのですか。
伊藤 高校のときから理系の学問に興味があって、大学ではそちらを専攻していました。同時に経営にも当時からすごく関心があって、経営工学を学びたい気持ちもありましたが、結局は大学院で化学工学を専攻して修士まで行きました。
井上 大学院修了後にジャフコに入社されています。
伊藤 通常は化学プラントメーカーや商社に進みますが、わたしはベンチャーキャピタル(VC)に就職しました。技術もわかりながら経営もわかるキャリアを積みたかったものですから。VCについては修士のときからエキサイティングな仕事だと感じていました。ただ、自分がベンチャーキャピタリストになりたいというよりは、将来自分で何かしらの事業を手がけたいという想いがあって、その修業の場としてジャフコを選びました。VC以外に一応商社なども受けましたが、「商社に入って何がしたいですか?」と聞かれて「ベンチャー投資です」と答えたら全部落とされました(笑)。当時の商社には、そういうキャリアパスが新卒にはなかったんです。
井上 当時、理系大学院から新卒でVCへというのは、相当珍しいですよね。ジャフコは草創期のVCの代表的企業ですが、実際に入られてみてどうでしたか。
伊藤 すごく苦労しました。同期が11人いたんですが、その中で唯一の理系修士で、浪人や休学を経験している関係でみんなより4つ年上。そういう中で、当時のジャフコは中堅企業への投資などもけっこうやっていたので、いろいろな経営者に会う機会を増やすことが会社のミッションとして求められていました。新卒で経営者の方と対峙して話をするのはなかなか難しい。だから最初はとても大変で、自分は向いていないのかと思いました。
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