TOP スペシャルコラムドラッカー再論 望ましい報奨、昇進のあり方とは?

2022/08/29

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スペシャルコラムドラッカー再論

第332回

望ましい報奨、昇進のあり方とは?

  • マネジメント
  • エグゼクティブ
  • 井上 和幸 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

 

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「貧弱な仕事ぶりによって解雇されるのであれば、卓越した仕事ぶりによって金持ちになれなければならない。報奨は仕事の目標と直接結びつける必要がある。」(『現代の経営』、1954年)

 

インセンティブについてはその効果性や是非がかねてより問われる中、ドラッカーはなかなか思い切りのよい言い方をしている。これに続けてドラッカーは、長期的な利益のために目標間のバランスが必要であると説いておきながら、短期的な利益によって給与を決めるようでは、経営管理者の方向づけとして最低であるとも述べている。

 

「報奨システムは、なすべき水準をはるかに超えて優れた仕事を行った者に対し、特別の報奨を与えることができないほど硬直的なものにしてはならない。」(『現代の経営』)

 

例としてドラッカーは、長年に渡って新人技術者の指導をしていた人の話を紹介している。彼の貢献は、すぐいま、目に見えるかたちで現れるわけではないが、中長期的に優れた技術者を輩出し続けることとなり、彼が退職したのちにその新人技術者の育成体制を整えるのに相当な時間とコストを要することになったという事例だ。

 

「この種の貢献に対しては、その貢献が行われているときに報いる必要がある。そのように報いることは、直接目に見える業績の向上はもたらさないかもしれない。しかし優れた組織の文化を生み出す。それは、貢献に報いないことを重大な不正とみなす人たちによって高く評価される。」(『現代の経営』)

 

しかも、単に優れた組織と卓越した偉大な組織を分けるものは、仕事が要求するものを超えて貢献しようとする人たちの意欲にある。そのような範となる人たちを持つ組織は幸運だとドラッカーは言う。

 

「特別の貢献に対する報奨は、名誉勲章やヴィクトリア十字勲章のように稀でよい。しかしそれは、それらの勲章と同じように大きく目立つものである必要がある。」(『現代の経営』)

 

さて、報奨と同じく、よく、企業・組織貢献への動機付け、インセンティブとも考えられるのが昇進だ。しかしドラッカーは、マネジメントの仕事はすべて、それ自体を働きがいのあるものとすべきであって、次の昇進のためのステップとさせてはならないと断言している。

 

「急成長中の企業でさえ、さらに昇進できる者は一部である。かなりの人たちにとって、現在の仕事が定年や死ぬまでの地位になるおそれがある。したがって、あまりに昇進を強調するならば、五人のうち三人から四人は不満をもち、士気を失う。あるいは、同僚を犠牲にしてでも昇進したいという間違った競争心を生む。」(『現代の経営』)

 

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プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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