2022/08/01
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私が経営者になった日
第99回
【伊那食品工業株式会社 塚越英弘氏】正しい考え方を持ち ぶれないことで、 社員を幸せにしたい。(Vol.3)
- 経営
- キャリア
- 経営者インタビュー
- 伊那食品工業株式会社 代表取締役社長 塚越 英弘氏
社長に任命された日=経営者になった日ではありません。経営者がご自身で「経営者」になったと感じたのは、どんな決断、あるいは経験をした時なのか。何に動かされ、自分が経営者であるという自覚や自信を持ったのでしょうか。
「社員にとっていい会社であろう」という極めてシンプルな理念のもと、1958年の設立以降、連続増収増益を続伸。多くの経営者がその秘訣を学ぼうとする「年輪経営」を実践する寒天製品トップメーカー伊那食品工業株式会社 代表取締役社長 塚越 英弘氏に3回にわたってお話を伺ってみました。
田舎から東京に。帰る気はなかったが、30歳で立ち止まった。 (Vol.1)
「いい会社」とは何か。経験と実感を通して、経営者となっていった。(Vol.2)
正しい考え方を持ちぶれないことで、社員を幸せにしたい。(Vol.3)
周りの状況に流されて信念がブレる。
「2008年、リーマンショックの年のことです。当社は2005年の寒天ブームで売上がいきなり40パーセント増加した反動がきていて、2006年、2007年と減収減益。そこにリーマンショックがあり、今年の昇給をどうするのかと、経営陣と人事で話をしました。基本的に毎年平均2パーセント位の昇給を必ずしてきましたが、今年は2パーセントじゃなくてもいいんじゃないか。1パーセントなら人件費がある程度抑えられるし、上がることには変わらない。世間は上がらないのが当たり前でも、当社は増えるんだからまだいいんじゃないかみたいな話を何となくしていたんですね。
そこに、当時会長である父が来て、いや、今年も同じように2パーセントだと言われたんです。人件費を削って経営するなら誰でもできる。だからちゃんと社員に払うものは払って、使うものはちゃんと使って、経営を成り立たせるのが本当のプロの経営者だと。これはガツンときました。分かったつもりがまだまだ分かってなかった。」
ブームの後、2年連続減収減益で経営が厳しく、世の中的にも厳しい状況で、1パーセントでも昇給するというのは、確かに妥協案かもしれないが妥当な線ではなかったのか。
「結局、周りの酷い状況に流されて、自分の信念がブレかかったということですよね。でも、ある意味そこで、いわゆる経営者としても腹をくくれたので、その後は、社長になったときも、自分の立場が変わるとか関係なく、自らの信念を貫いてくことに対して特にそんな戸惑いやブレることはなかったです。」
「いい会社を作りましょう」をバイブルに。
伊那食品工業が社員を大事にしていることを示す一つに、“伊那食ファミリー”という表現がある。その言葉の受け止め方は変わったのだろうか。
「入社最初のころは何か少し、ちょっと違和感ありましたけど、すぐになじみましたね。みんなで仲良くなるというのは、全然悪いことじゃないし、むしろいいことなんだなって思うようになりました。いわゆる大企業に入ると、いろいろ人間関係とか根回しとか大変じゃないですか。何でこんなことを...
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