TOP スペシャルコラムドラッカー再論 自己管理であるべき目標管理、それが及ぼすマネジメントへの変革。

2022/07/04

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スペシャルコラムドラッカー再論

第324回

自己管理であるべき目標管理、それが及ぼすマネジメントへの変革。

  • マネジメント
  • エグゼクティブ
  • 井上 和幸 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

 

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目標管理の利点は、自らの仕事を自ら管理することにあると、ドラッカーは述べている。

 

「その結果、最善を尽くすための動機がもたらされる。高い視点と広い視野がもたらされる。目標管理は、マネジメント全体の方向づけや仕事の一体性のためには不要としても、自己管理によるマネジメントのためには不可欠である。」(『現代の経営』、1954年)

 

ドラッカーは、「管理」よりも「測定」という言葉を多く使っている。それは彼曰く、管理とはあまりに曖昧な言葉だからだという。
管理とは自らを方向付けることを意味する。しかし同時に、人を支配することも意味しうる。目標管理における目標とは、前者の意味での管理の基礎となるものであって、後者の意味での管理ではない(そうなるべきではない)。

 

「目標管理の最大の利点は、支配によるマネジメントを自己管理によるマネジメントに代えることにある。」(『現代の経営』)

 

しかし、自己管理によるマネジメントを実現するには、その考えを正しく望ましいものとして認めるだけでは不十分である。そのための道具立てが不可欠であり、その点でのこれまでの考え方や仕事のし方に対して思い切った変革を要する。

 

「自らの仕事を管理するには、自らの目標を知っているだけでは十分ではない、自らの仕事ぶりとその成果を、目標に照らして測定することが必要である。したがって、事業のあらゆる領域について、明確な共通の評価基準を与えられることが必要である。」(『現代の経営』)

 

それらの評価基準は、必ずしも定量的でなくともよいし、厳密でなくともよいとドラッカーは補足する。
ただし、単純で明確、かつ合理的であることが不可欠だ。注意と努力を、向けるべきことろへ向けるものであることが必要だ。そしてなによりも、信頼のおけるものであることが欠かせない。少なくとも誤差の範囲が認識され理解される程度に要を得たものであることが必要であり、複雑な解釈や哲学的な理論を抜きにして理解できるものではければならない。

 

「もちろん、自らの仕事ぶりを測定するための情報を持つことが必要である。所期の成果を達成するために必要な措置をとれるよう、情報は早く得ることが必要である。しかもそれらの情報は、上司ではなく本人に直接伝えられることが肝要である。情報は自己管理の道具であって、上からの管理の道具にしてはならない。」(『現代の経営』)

 

いまや、我々は仕事と成果を測定するための情報を容易に入手することができる。なので、やろうと思えば効果的な自己管理は可能である。
が、そのことが逆にことを難しくしている側面もあ...

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プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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