TOP スペシャルコラムドラッカー再論 顧客創造戦略はマーケティングの初歩以外のなにものでもなく、マーケテイングのすべてである。

2021/09/27

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スペシャルコラムドラッカー再論

第285回

顧客創造戦略はマーケティングの初歩以外のなにものでもなく、マーケテイングのすべてである。

  • イノベーション
  • マネジメント
  • エグゼクティブ
  • 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO 井上和幸

 

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顧客は経済学のように合理的な判断や行動はしない。そこから生まれた行動経済学が昨今流行りなのは皆さん、ご存知の通りだ。
しかしドラッカーはちょっと面白い言い方をしている。
企業は合理的に行動しない顧客のことをこぼすが、合理的に行動しない顧客などいない。いるのは無精な企業だけである。顧客は合理的に行動する。単に顧客の事情が企業の事情と違うだけなのだ、と。

 

「イノベーションのための戦略は、それらの事実が顧客に関りを持つ限り不可避の事実として認めるところから始まる。顧客が買うものはそれが何であれ彼らの事情に合ったものである。事情に合ったものでなければ何の役にも立たない。」(『イノベーションと企業家精神』、1985年)

 

これをドラッカーは「事情戦略」と名付けているが、個人的には正直、違和感を感じざるを得ない。これは「戦略」というよりも、そもそもの認識のし方であろうと。

 

ここまで「顧客創造戦略」として「効用戦略」「価格戦略」「事情戦略」の3つを紹介したが、残る一つが「価値戦略」だ。
顧客創造戦略としての価値戦略は、企業にとっての製品ではなく、顧客にとっての価値を提供することを指す。

 

「この戦略は、顧客の事情を顧客のニーズの一部として受け入れるという前述の戦略の延長線上にある。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

そもそも、顧客が何を求めるのか、何を買うのかを考えれば必ず勝てる=売れるにもかかわらず、なぜそれが稀にしか見られないのか?
理論経済学の父、ディヴィッド・リカードは、「利益は、賢さの違いからではなく、愚かさの違いから生まれる」と言った。まさに企業家は、自らが賢いからではなく、ほかの者が何も考えないから成果を挙げるのだと、ドラッカーは若干皮肉っぽく言っている。

 

「理由のひとつは経済学とその価値論にある。確かにあらゆる経済学が、顧客は製品ではなく製品が提供するものを購入するという。ところがそのあと、経済学は、製品の価格以外のこと、すなわち顧客が製品やサービスの占有や占有のために支払う価格以外のことについては、いっさい言及しない。製品が顧客に提供するものについては二度と触れない。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

不幸なことに、製品やサービスを提供する企業は、この経済学に従う。確かに、製品Aの生産コストはXドルである。生産コストXをカバーし、かつ資本コストもカバーして適切な利益をあげるにはYドルを得る必要がある。こう言えるし、言うことには意味がある。
しかし、それが「顧客は製品Aに対してYドルを払わなければならない」ということにはならない。...

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プロフィール

  • 井上和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。

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