TOP スペシャルコラムドラッカー再論 高度成長期の日本企業のお家芸であった「柔道戦略」とは、何か?

2021/08/23

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第280回

高度成長期の日本企業のお家芸であった「柔道戦略」とは、何か?

  • イノベーション
  • マネジメント
  • エグゼクティブ
  • 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO 井上和幸

 

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戦後、日本が高度成長を遂げた理由の大きなひとつに、「柔道戦略」の選択があることをドラッカーは指摘する。
ベル研究所が開発したトランジスタの利用に本気にならなかった米国大手電機メーカーをしり目に、トランジスタのライセンスを買い、当時、重さが真空管ラジオの5分の1以下、値段が3分の1以下という最初のポータブルラジオを世に出し米国および世界のラジオ市場を手中に収めたソニー。
これに始まり日本のメーカーは、テレビ、クォーツ・デジタル時計、プログラマブル電卓でこの戦略を繰り返した。

 

「日本企業は、アメリカ企業に対し柔道戦略をとることによって何度も成功してきた。(中略)市場において支配的地位の獲得を目指す戦略のうち、柔道戦略こそ最もリスクが小さく最も成功しやすい戦略である。」(『イノベーションと企業家精神』、1985年)

 

ドラッカーは、ここで言う「柔道戦略」について、具体的にどのような戦略のことを指しているのか、述べていない。上記の事例から言わんとすることはなんとなく察することができるが、それが「柔道」とどのような関連を持つのか、少し分かりにくい。

 

「新規参入者に、柔道戦略を使わせ、急成長させ、トップの地位を得させるのは、先行者に共通して見られる5つの悪癖のいずれかが原因である。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

第一に、自分たちが考えたもの以外にはろくなものがないという傲慢さ。
第二に、最も利益のあがる部分だけを相手にするという、いいとこ取り根性。
第三に、価値についての誤解。(製品やサービスの価値は供給者がつくるのではない。顧客が引き出し、対価を払うものだ。)
第四に、創業者利益なる錯覚。
第五に、すでに地位を確立している企業によく見られ、かつ必ず凋落につながるものとして、多機能の追求がある。

 

ドラッカーのこの5つの悪癖の指摘、その挟撃によってイノベーターとしての地位を獲得する戦略を「柔道戦略」と呼んでいることからして、この戦略とは「強者の弱みを突き、倒す」ことを指しているに違いない。ダビテとゴリアテ。柔よく剛を制す、ということか。

 

「柔道戦略が特に成功する状況が3つある。
第一は、すでに地位を確立しているトップ企業が予期せぬ成功や失敗を取り上げず、見過ごしたり、無視したりするときである。ソニーが利用した状況がまさにこれだった。
第二は、ゼロックスがもたらした状況である。新しい技術が出現し急成長する。新しい技術を市場に導入した者は古典的な独占体として行動する。(中略)地位を利用し、市場のいいとこ取りをし、創業者利益を手にする。これに対し、博愛的独占体は競...

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プロフィール

  • 井上和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。