TOP スペシャルコラムドラッカー再論 ベンチャーにおける資本政策と落とし穴。

2021/06/28

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第273回

ベンチャーにおける資本政策と落とし穴。

  • イノベーション
  • マネジメント
  • エグゼクティブ
  • 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO 井上和幸

 

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設立間もないベンチャーに特有の病いが市場志向の欠如であるとドラッカーは言う。
それは初期段階における深刻な病いであり、ベンチャーをかならずしも殺しはしないまでも、成長を完全に止めてしまいかねない。

 

「これに対し財務志向の欠如と財務政策の欠落は、成長の次の段階における最大の病いとなる。特に急成長しつつあるベンチャーにとって脅威となる。財務上の見通しをもたないことは、事業が成功すればするほど大きな危険となる。」(『イノベーションと企業家精神』、1985年)

 

ありがちなことは、ロケットスタートできたと感じているベンチャーが華々しい売上見通しを発表する。それにVCなどが目をつける。資金調達も成功するかもしれない。
しかし1年後、2年後、その思惑から大きく外れ、「注目の製品・サービス」が伸び悩む、あるいは逆にシュリンクしてしまう。急増した従業員は大半を整理解雇するような事態にまで至る。

 

「挫折の原因はいつも同じである。第一に、今日のためのキャッシュがない。第二に、事業拡大のための資本がない。第三に、支出や、在庫や、債権を管理できない。おまけに、これら三つの症状は同時に起こる。ひとつでも起こると体力を損なう。財務上の危機は立て直しに非常な労力と苦痛を伴う。しかしこれら三つの症状はいずれも予防できる。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

そもそも企業・事業の成長とは、資金の余剰ではなく不足を意味する。
成長にはキャッシュが必要であり、利益はPLに現れる「虚構」だ。だが税金は、この虚構に対してかけられる。
成長は余剰の発生ではなく、債務の発生と税金の流出をもたらすとドラッカーは指摘する。経営者の皆さんには、まさにという感じだろう。

 

「ベンチャーは、成長が健全であってかつ早いほどより多くの資金上の栄養を必要とする。新聞や株式情報に大きく取り上げられたベンチャーや最高益を更新したベンチャーが二年後には無残な苦境に陥る。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

ベンチャーはキャッシュフローの分析と予測と管理を必要とする。常に一年先を見て、どれだけの資金が、いつ頃、何のために必要になるかを知っておかなければならない。一年の余裕があれば、手当は可能だろう。

 

「成功しているベンチャーは自らの資本構造を超えて成長する。経験則によれば、売上げを40%から50%伸ばすごとにそれまでの資本構造では間に合わなくなる。資本構造を変えなければならない。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

その具体的施策について、次回見てみたい。

 

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プロフィール

  • 井上和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。