TOP スペシャルコラムドラッカー再論 産業構造の変化が起こるとき。それをチャンスとできる企業、できない企業。

2021/01/25

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スペシャルコラムドラッカー再論

第252回

産業構造の変化が起こるとき。それをチャンスとできる企業、できない企業。

  • エグゼクティブ
  • マネジメント
  • 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO 井上和幸

 

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イノベーションの機会としての産業構造の変化は、次の4つのような場面・フェーズで、ほぼ確実に起こるとドラッカーは言う。

 

「(1)最も信頼でき、最も識別しやすい前兆は急速な成長である。」(『イノベーションと企業家精神』、1985年)

 

この前兆は、あらゆるケースで共通している。ある産業が経済成長や人口増加を上回る速さで成長するときに、その産業構造そのものがほぼ間違いなく劇的に変化する。それまでの仕事の仕方でも、ある程度成功を続けることはできる。そのため誰もそれを変えようとしない。しかし仕事の仕方は確実に陳腐化し始める。

 

「(2)産業の規模が2倍に成長する頃とほぼ時を同じくして、それまでの市場の捉え方や市場への対応の仕方では不適切になってくる。それまで業界トップの地位にあった企業の市場のとらえ方が現実を反映せず、歴史を反映しただけのものになってくる。しかるに報告や数字は、古くなった市場観に従ったままである。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

ありがちなこととしては、急激な成長に出会った旧来の企業は、その成長市場環境の追い風だけに満足し安易に利益を得ようとする。そのような対応をしている間に、イノベーター企業が業界構造を変えてしまって、結果として新たな市場と利益を奪い去っていく。

 

「(3)いくつかの技術が合体したときも産業構造の急激な変化が起こる。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

これは解説する必要もないだろう。スマホやドローン、これからで言えばMaaSやMR(Mixed Reality、複合現実)などだろうか。
自動車産業などは、20世紀以来、市場を支配してきた自動車会社に対して、GAFAやテスラなどの「新参者」がとってかわる姿が現実のものとして見えてきている。

 

「産業構造の変化を利用するイノベーションは、その産業が一つあるいは少数の生産者や供給者によって支配されているとき効果が大きい。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

長らく成功を収め、挑戦を受けたことのない支配的な地位の生産者や供給者は傲慢になりがちである。新規参入者が現れても取るに足らぬ素人と見る。そのくせ、その新規参入者のシェアが増大を続けても対策を講じることができない。
アパレルや百貨店に、この残念な事例を見てしまう。このドラッカーの警告は、1985年に発せられていた。それから35年、ユニクロやニトリ、イケア、カインズ、あるいはアマゾンに取って代わられてしまった今、もはや取り返しようもない。

 

「(4)仕事の仕方が急速に変わるときにも産業...

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プロフィール

  • 井上和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。