TOP スペシャルコラムドラッカー再論 労働力ありきになっているものと、これから使えそうな知識に目を向けてみる。

2020/12/28

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スペシャルコラムドラッカー再論

第249回

労働力ありきになっているものと、これから使えそうな知識に目を向けてみる。

  • エグゼクティブ
  • マネジメント
  • 井上 和幸 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

 

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イノベーションの第三の機会としてニーズの発見があるということに前号から入っているが、ドラッカーはこれにはプロセス上のニーズ、労働力上のニーズ、知識上のニーズの3つが主にあるとドラッカーは述べている。その中の、プロセス上のニーズについては前号でご紹介した。今回は労働力上のニーズと知識上のニーズについてだ。

 

「労働力ニーズもまた、きわめてしばしばイノベーションの機会となる。」(『イノベーションと企業家精神』、1985年)

 

ドラッカーは『イノベーションと企業家精神』の中で、1900年代初頭にかなり大人数の職種であった電話交換手を挙げており、電話のその後の普及の中でそのまま電話交換を手作業で行うとするとアメリカの労働力世代の全女性が電話交換手となる必要があるというシミュレーションが提示された。これに対してAT&Tの技術者が自動交換機を開発、導入。その後すべての電話交換は自動化された。
その後も様々な業界で同様のことが起きて現在に至る。駅の切符切りが自動改札機に。銀行窓口がATMやCDに。ここから起きそうなことは、いま非常に多くの人手を要している店舗オペレーションや配送に関する労働力不足だろう。既に始まっているが、無人店舗や自動配送は、第二第三の自動交換機、自動改札となることはほぼ間違いないと思われる。

 

「イノベーションの機会としてのニーズは、プロセス・ニーズと労働力ニーズが最も一般的である。しかし、その利用がより困難であり、より大きなリスクを伴ってはいるが、非常にしばしば重要な意味をもつニーズとして知識ニーズがある。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

科学者が行う「純粋研究」に対して、実用に向けた橋渡しを行う「開発研究」がある。電球の発明、写真の発明、さらに高度な、いま我々の身の回りを取り巻いているあらゆる側面に開発研究によるイノベーションの成果がある。

 

「開発研究というと大規模に聞こえるかもしれない。多くの人たちにとって、それは月へ人を送ることや、小児麻痺のワクチンを発見することを意味する。しかし成功を収めているものの多くは目標の明確な小さなプロジェクトである。開発研究は的を小さく絞るほどよい結果が出る。」(『イノベーションと企業家精神』)

 

皆さんの周りにある、的を小さく絞った知識イノベーション。なにか、すぐそばに転がっているものがあったりしないだろうか?

 

 

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プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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