2020/12/07
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スペシャルコラムドラッカー再論
第246回
間違った努力の裏には必ず認識ギャップが存在する。
- エグゼクティブ
- マネジメント
- 井上 和幸 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
業績ギャップをイノベーションの機会として利用するには、まず解決すべき問題を明確にしなければならない。そして既知の技術と既存の資源を利用してイノベーションを実現しなければならない。
「もちろん開発のための努力は必要である。しかし革新的な知的発見を必要とする状況であるならば、企業家の出番はまだ早く、機は熟していないというべきである。しかもイノベーションは複雑であってはならず、単純でなければならない。華々しいものではなく、当たり前のものでなければならない。」(『イノベーションと企業家精神』、1985年)
業界内の者たちにとっては、誰もがギャップの存在に気づきながら、無視せざるを得ないとドラッカーは指摘する。
ギャップに対してイノベーションを起こすのではなく、あちらこちらをいじりまわす。こちらの火を消し、あちらの穴を埋めるのに忙しい。業界外部の誰かが行ったイノベーションと闘うどころか、それを検討する余裕さえない。取り返しがつかなくなるまで気づきもしない。
その間にイノベーションを行った者は、これ幸い、誰にも煩わされることがない。
「産業内部の者が物事を見誤り、現実について誤った認識をもつとき、その努力は間違った方向に向かう。成果を期待できない分野に集中する。そのときそれに気づき利用する者にとっては、イノベーションの機会となる認識ギャップが生まれる。」(『イノベーションと企業家精神』)
認識ギャップはしばしば自ら明らかになるとドラッカーは言う。
真剣な努力が事態を改善せず、むしろ悪化させるとき、そもそも努力の方向性が間違っていることが多い。そのようなときは、シンプルに成果の上がることに力を入れるだけで大きな成果が簡単に得られるものだ。
「事実、認識ギャップを利用するために華々しいイノベーションを必要とすることはあまりない。認識ギャップは産業や社会的部門全体について見られる現象である。しかしその解決策は通常、的を絞った単純で小さなイノベーションである。」(『イノベーションと企業家精神』)
我が社の認識ギャップは、何だろう?すぐ目の前に存在しているのに見逃しているイノベーションの機会が、あなたの身の回りにも必ずあるはずだ。
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