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2020/09/30

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第113回

実現したいのは「金融リテラシーの高い日本」。お金の知識がないという理由で、夢をあきらめずにすむ社会を創りたい

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  • 株式会社ABCash Technologies 代表取締役社長 児玉 隆洋氏

 

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日本人は苦手、と言われがちなお金の知識。そこには、「お金の話は汚らわしい」「がめつい」といった古くからの価値観も影響しているようです。けれど、コロナ禍で停滞している経済状況の中で、いたずらに不安を募らせるのか、大局観を持って次の一手が打てるのかどうかは、その人がどれだけ金融知識を持っているかに左右される面が大きいはずです。

 

「3ヵ月でわたしはお金に強くなる」をキャッチフレーズに、マンツーマンでお金のパーソナルトレーニングサービス「ABCash(エービーキャッシュ)」を提供している株式会社ABCash Technologiesは、そこに課題感とニーズを感じた児玉隆洋 代表取締役社長が立ち上げた会社です。

 

タレントのローラさんをアンバサダーに起用し、100店舗展開を目指して本格的なスタートを切った途端のコロナ禍で、柔軟なピボットを余儀なくされた同社。対面によるリアル体験を重視したサービスから、そのクオリティを担保したまま展開された大胆な完全IT化の顛末、敬愛する藤田晋氏(サイバーエージェント 代表取締役社長)のDNAを受け継いだ経営についての考え方、そして、日本の金融教育の未来について、語っていただきました。

 

(聞き手/井上和幸)

 

海辺の書店で運命の出会いを果たした「渋谷ではたらく社長の告白」の著書

――サイバーエージェント藤田(晋)さんの著書を読まれて同社に入社されたというエピソードを伺いました。

 

 

児玉 大学4年生までサーフィンに明け暮れていて、海辺の本屋でたまたま手に取ったのが(藤田さんの著書である)『渋谷ではたらく社長の告白』でした。それで、「こういう人のそばで働きたい」「自分もいつかはこの人のような経営者になりたい、会社を作りたい!」と強く思ったんです。インターネットマーケティング広告という世界があることも、この本を読んで初めて知りました。

 

 

――ではそのときは、「藤田さんの最年少(東証一部上場)記録を抜いてやろう!」くらいの鼻息で?(笑)

 

 

児玉 いや、さすがにめっそうもないですが(笑)、ただ「20代のうちに」という思いはありました。サイバーエージェントという組織が魅力的すぎて、結局11年ほど会社に勤めさせていただくことになったのですが。

 

 

――同社では、アメーバブログとAbemaTVの立ち上げをご担当されましたよね。もともと新卒でも採用基準が高い会社で、誰もが簡単に入社できるわけではない。そこに、大学4年の夏の海辺で社長の存在を知って入社し、それだけの業績を上げられるのはすごいなと思っていたのですが。

 

 

児玉 もともと同社は、人材投資に対する考え方が柔軟な会社です。年齢や経験にかかわらず、熱量やポテンシャルによってどんどん大きなミッションに抜擢してくれていまし。私が入社して成長できたのも、そういった藤田さんの考え方のおかげだと思っています。

ただ、新卒同期は135人いましたが、その中で私は下から数えた方が早いくらいの劣等生でした。ブラインドタッチなんてもちろんできませんし、新人研修が終わってPCの電源を落とすときも、担当者に「昭和のブラウン管テレビじゃないんだから!」と怒られたり。何をしたのかというと、電源ボタンを長押しして強制シャットダウンをしたんです(笑)。

 

 

――確かにそれは、いろいろな意味で印象深い新人ですね(笑)。やはり、同社を志望される方は、もともとインターネットビジネスに興味があったりプログラミングを学んでいる方ですからね。

 

 

児玉 おっしゃるように同期は優秀な人ばかりですから、私がパソコンの基礎を身につけている間にもどんどん成長していきます。でも、「ここでやりたい」と自ら選んで入社したので、とにかく藤田さんの背中だけを見て、恥ずかしげもなくすべてをマネしようというスタイルで、必死でキャッチアップを続けていきました。

 

 

――こういう言い方は失礼かもしれませんが、児玉さんにとっての藤田さんは、ひな鳥が初めて目にする親のアヒルのような存在なのですね。

 

 

児玉 まさにそうで、経営者へと立場が変わった今も、藤田さんのことはずっと追っています。今でも藤田さんの本は読み返しますし、何かを判断する際も藤田さんならどう考えるかイメージしますね。

そのもがきが現在につながった「第一次マーケティングショック」

――起業されるにあたって、ファイナンシャル領域に着眼されたきっかけは何だったのですか?

 

 

児玉 実は私の親は両親とも警察官で、その影響もあって、自分の人生をかけて会社を興していくのであれば、社会性の高いことをやりたいというのが第一にありました。

一方で株式会社としてやっていく以上、利益も追求しなければなりません。社会性と利益の追求、その両輪を回していくためにも、ファイナンシャル領域は挑戦しがいがあると思ったんです。

 

 

――もともと、金融知識の必要性は感じているタイプだったのですか?

 

 

児玉 必要だとは感じていましたが、私自身がお金に無頓着で、給料日の翌日には口座の残高がなくなるというタイプでした(笑)。ただ、そういう素人だったからこそ、ユーザー目線のサービス作りを主軸において事業を立ち上げることができたと思っています。エデュケーションに特化し、金融商品を売らずに中立性を貫くというコンセプトも、ユーザーの立場に立てていたからこそ生まれました。

 

 

――ただ、立ち上げにはなかなかご苦労されたと伺いました。

 

 

児玉 はい。私の中で「デジタルマーケティングショック」と呼んでいる危機がありまして(笑)。これは、アメーバブログとかAbemaTVという、今や国民的サービスと呼んでいいサービスを立ち上げた自負が自己過信を招いた結果だと思っているのですが、前職で培ったマーケティング力がまったく通用せず、お客さまがぜんぜん来てくださらない。サービスの本質はおろか、その内容さえもまったく伝わらないという期間が、最初の1年くらい続きました。

 

 

――他の領域でやっているベンチャーでも割に起こりえることだと思うのですが、それは何を持ってブレイクスルーされたのでしょう?

 

 

児玉 思い出しても吐き気がするくらいの時期でしたが、自分なりに2本の矢を放ちました。

 

1本目の矢は、とにかく自分でやる。

「平時はアフター・ユー、有事はフォロー・ミー」という言葉があって、苦しいときにこそ先陣を切ってやっていく。ウェブサイトのデザインも私自身が勉強しながら夜な夜な作り、自分でサイトのプログラミングをして、自分でバナーのデザインを組んで…ということを1年くらいやりました。前職時代は部下に任せていたような仕事も、すべて自分で。

 

2本目の矢は、人材投資。社員をごはんに連れて行ったり、ミッションステートメントを作ったり。あと、「リフレッシュフライデー」という、毎月第1金曜日は午後にみんなでリフレッシュし楽しみましょうという制度があるのですが、そういう制度を考えて、社員が成長しながら長く働いていける環境を作りなどを徹底的にやった。社内表彰も、私がトロフィーのデザインをして、発注して。

周囲からは「それ、今やる必要ないよね」と言われていましたが、同社はそれでうまく行っていた会社ですし、そのDNAは1番に受け継ぎたい要素だという念いがありました。

 

 

――そこから、お客様の反応が変わってきたという手応えがあったのですか?

 

 

児玉 そうですね。その後から入社してくれた優秀なメンバーと一緒に、手を動かしながらどっぷりとデジタルマーケティングをやっていく中でノウハウがたまってきた実感がありました。

 

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プロフィール

  • 児玉 隆洋氏

    株式会社ABCash Technologies 代表取締役社長

    大学卒業後、2007年サイバーエージェントに入社。Amebaブログアプリを責任者として立上げappstoreランキング1位を獲得、国内最大のブログアプリへと成長させる。その後、Amebaブログ事業部長に就任し、Facebook/Instagramとの事業提携を実現。プラットフォーム統括責任者、テクノロジーイノベーション室長、インターネットテレビ局であるAbemaTVの広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育、網羅的かつ中立的なファイナンシャルリテラシーの必要性を強く感じ、株 式会社ABCashTechnologiesを設立、代表取締役社長に就任。2019年、すごいベンチャー100(東洋経済)、2019スタートアップピッチファイナル金賞を受賞。