2020/08/13
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ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術
第76回
当事者意識が全ての原動力~空き家問題を動かす~
- キャリア
- ビジネススキル
- 田村 剛氏 全国空き家バンク推進機構理事
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リクルートをはじめ民間企業で約34年、茨城県境町参与、一般社団などで約2年、これまでさまざまな組織で、さまざまな事業に携わってきました。特に新規事業の立ち上げで最も重要なことは、“当事者意識”を持って取り組むことだと思っています。 昨今、社会課題に対してビジネスを起こすケースが増えていますが、そのためには当事者意識を持って周りの人を巻き込むことが重要なのです。 今回は、私がなぜ空き家に注目し、まちづくりに取り組んできたか、その一部を紹介します。 詳細は「リクルートOBのすごいまちづくり2」をご覧ください。
◆ 1、空き家のいま
2018年住宅・土地統計調査(総務省)によれば全国の空き家数は846万戸。総住宅数に占める割合は13.6%となっています。(図表1)特に利用されることなく放置されている「その他空き家」がこの20年間で1.9倍に増加しています。
空き家率の高い県として、山梨県(21.3%)、和歌山県(20.3%)、長野県(19.5%)、徳島県(19.4%)が上位にランキングされていますが、いまや空き家問題がない県はありません。(図表2)
空き家問題は、まさに私たちの身近な問題なのです。
◆ 2、空き家はなぜ増えるのか
では空き家はなぜ増えるのか? まずは図表3を見てください。このグラフは我が国の長期人口推移(国土交通省作成)を表したものです。日本の人口は2008年にピークを迎えており、2050年までに約2600万人が減少すると予測されています。
2050年までに東京都、埼玉県、千葉県の1都2県を足した人口がほぼなくなるぐらいのインパクトになります。地域別にみると、2015年時点で人口が1万人未満の市町村では、人口がおよそ半分に減少する可能性があると予測されています。
野村総合研究所予測(2017.6.20)では、2033年に3軒に1軒は空き家になるとの予測もあり、我が家の隣は空き家という状況が、どの市町村でも見られる風景になると予想されます。放置された空き家が増加することで周辺地価の下落を招く可能性もあり、不動産取引も難しくなってきます。今後さらに空き家率が上昇すると、生活インフラの維持・管理も難しくなる地域が増えることになります。
空き家問題は、持続可能なまちづくりのためにも対処すべき問題なのです。
◆ 3、空き家問題の解決に向けて取り組んできたこと
(1)全国版空き家・空き地バンクの立ち上げ危険空き家報道など空き家が社会問題化される中、不動産会社が取り扱わない「その他空き家」が全国に318万戸(2013年時点)存在することが分かりました。
そこで、空き家の現状把握と解決策を検討するために「日本の住まいの未来を創る会」という非公式な勉強会を岐阜県大垣市と大阪府池田市で立ち上げました。
勉強会には自治体担当者、地方銀行、不動産鑑定士、宅建事業者にも参加してもらい、それぞれの地域で空き家問題を議論する中で、この問題の根深さを実感することになります。
私は国を巻き込む必要があると考え、勉強会などを通じて得た空き家の現状と課題、また各地の「空き家バンク」の課題を、定期的に国土交通省に共有してきました。
もともと「空き家バンク」は各自治体が独自に運営しており、制度も仕組みもバラバラでした。そこで空き家DBの一元化と、全国の空き家を検索可能にするために、国主導の「全国版空き家・空き地バンク」を構築することを提案し、国交省による空き家バンク構築が決定されました。開発・運用は、公募によってLIFULLとアットホームの2社が選定され、2017年10月に2つのサイトがリリースされました。
しかし、新たな「全国版空き家・空き地バンク」に参画するかは、あくまでも自治体の判断に委ねられたため、国交省と協力して、自治体担当者向けに北海道から沖縄まで参画を促すための説明会を実施しました。
空き家問題への関心も高まり、2019年2月時点で「全国版空き家・空き地バンク」への参画数は603自治体となり、9,000件を超える物件が登録されるまでになっています。
いまでは、「農地付き住宅」や「公的不動産」も検索できるようになっており、物件所在地ごとのハザード情報も確認できるよう機能アップされています。
※全国版空き家・空き地バンクサイト
(2)一般社団法人全国空き家バンク推進機構の立ち上げ
全国版空き家・空き地バンクをより多くの自治体に活用してもらうために、元佐賀県武雄市長の樋渡啓祐さんと一般社団法人全国空き家バンク推進機構(理事長:樋渡啓祐)を設立しました。