2020/02/06
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ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術
第60回
人の心を動かす自己演出力とは?
- キャリア
- ビジネススキル
- 中谷 彰宏氏 作家
SNSの文言や画像でいくら感じよく見せようと頑張っても、ふだんしていることは出てしまいます。「この人は感じがいい」「この人はかかわり合いたくない」ということに対して、センシビリティーを持つことが大切です。
ドアをノックする時は、いつもより少し上のところをたたくように、ふだんの習慣から変えていきます。演出は、特別な時に特別なことをするのではありません。ふだんから条件反射でしていることが、演出として大きいのです。
◆演出とは、エネルギーを生み出すことだ
「アイデア会議をするのですが、盛り上がりません。会議を盛り上げるには、どうしたらいいですか」と、相談されました。会議は、一種の舞台です。ブレストでアイデアが行き詰まる時に、一瞬、沈鬱(ちんうつ)な空気が流れることがあります。「何かいいアイデアはないの?」と言われても、固まってしまって何も出てこないのです。
その空気を変えられるのが、演出家としてのリーダーの力です。演出力のある人は、その人が入ってくるだけで空気がパッと明るくなるのです。
私はTOKYO MXの『モーニングCROSS』という朝のニュース番組に出演しています。朝、「おはようございます」と言ってスタジオに入ると、MCの堀潤さんが「中谷さんが入ってくるだけでスタジオが明るくなるな」と言いました。
実は、私が明るくしたのではありません。その言葉を言った堀潤さんが、その場を明るくしたのです。特に、朝の番組なので、暗い出来事があっても、それに負けないで元気よくやっていこうということです。
私は、コシノヒロコさん、ジュンコさん、ミチコさんの3姉妹と親戚です。つきあいも多く、いろんな機会に呼んでもらっています。綾子お母ちゃんも含めて、あの3姉妹はファッションデザイナーの肩書には、もはやおさまっていません。本来、ファッションデザイナーの仕事は、服をつくることではなく、服を通して人を元気にすることです。
ヒロコ姉ちゃんが神戸で車椅子の人のファッションショーを企画しました。出てくる人も、モデルさんではなく、普通のシロウトの人です。これを見ても、ファッションの目的が着飾ることではなく、落ち込んでいる時でも着る人に元気を与えることだと分かります。
3姉妹は、ファッションデザイナーの枠からはみ出たことをたくさんしています。例えば、ジュンコさんは、器や名刺、花火のデザインをしています。一見、ファッションデザイナーと関係ないようですが、実は違います。ファッションデザイナーは、パッションを生み出し、パッションをデザインする人です。
本質的には「パッション・デザイナー」なのです。私の演出の仕事も、コシノ家と同じDNAとして、まったくご同業にいるんだなと分かります。
上司が部下に対して「元気を出せ。頑張れ」と言えば言うほど、部下は「頑張っているのに分かってくれない」という気持ちになります。大切なのは、なんとなく「頑張りたいな」という気持ちにさせることです。
サッカーで、ハーフタイムの間に選手が監督の言葉に感激して、後半は泣きながら出てくることがあります。上司の役割は、部下を感激させることです。「頑張れ」と言わなくても、頑張りたくなるような空気をつくるのです。
すぐれたカメラマンは、「笑ってください」と言わなくても、モデルさんが勝手に笑ってしまうようなことをしています。それが演出です。
演出は、自分に対してだけではなく、相手に対してすることでもあるのです。パッションを盛り上げることが、演出なのです。
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■書籍情報
『生涯、超一流であり続ける人の 自己演出力』
著者: 中谷彰宏
出版社:大和出版
価格:1,540円(税込)
※この記事は、アイティメディア株式会社の許諾を得て
「ITmediaエグゼクティブ『ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術』」
の連載から転載したものです。無断転載を禁じます。
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