2019/05/16
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ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術
第30回
「場当たり的」が会社をつぶすに込める強い思い~今こそ、総力戦で乗り切ろう!~
- キャリア
- ビジネススキル
- 北澤 孝太郎氏 東京工業大学大学院 特任教授(MBA科目の営業戦略・組織を担当)東北大学未来型先端医療創造卓越大学院プログラム 特任教授 株式会社フォーサイト 社外取締役
自分の「思い」を明らかにするだけでなく、それによって共感してもらい、みんなの「思い」を統合しきって、戦略が腹落ちできるように、またそれを具体的にして順番をつけた戦術にみんなの魂が入るようにしていかねばならないのです。そうです。「場当たり的」であっては、みんなを不幸にするばかりか、自分が所属する企業を守り切れないでしょう。
それを、まさに身近で体現されたのが、上皇ご夫妻です。この30年間、戦争被災地や災害被災地に駆け付けられ、人をいたわる言葉をかけ続けられた言動を見ていると、お二人こそ、最も「場当たり的」でなく生きて来られた、これからの日本人のお手本ではないかと思えてなりません。言いたいこともたくさんおありだったでしょうが、ひたすら自分の役割を黙々と果たし続けてこられたことは、多くの方々が共感し、ご尊敬申し上げることだと思います。
そして、世の中の風潮も、こういうことを申し上げるとすぐに右翼とか変わり者とか思われた時代を通り過ぎ、特にあのあまりにも痛ましい東日本大震災以降、大きく変化したように思います。少なからず、人とのつながりや地域の大切さなどを強烈に意識させるきっかけになりました。そして、その結果として、日本人が本来もっていた利他の精神を再び思い出させてくれました。他人を蹴落とすよりも、互いの繁栄を望む。個人の利益よりも分け与えることの美徳を重んじる。人のために惜しまず、労力や時間を割くことを尊ぶなど、日本の本来の良さを見直す大きなきっかけになって気がしてならないのです。
平成から令和にかわるこんな時代の節目にこの本を出せたことを、本当に喜ばしく思っています。国も、企業も、また個人も、今こそ、「場当たり的」にならないで、戦略的に、物事をしっかり考えるようになってほしいと思います。逆を返すと、今、もう一度いい国に、いい組織をつくるには、そしていい人生を歩むには、と考える正念場が来ているともいえます。ここで考えないと自らを誇れる、また目的に対して大きな成果を得ることのできない国、企業、個人に成り下がってしまうでしょう。
本書では、その根源である「場当たり的」が発生するメカニズムを解明し、有効な解決策を提示しようと試みました。ひょっとしたら、企業だけでなく、日本国自体が、終戦以降抜け出せないでいるかもしれないこの課題に、思い切って、突っ込んで、挑戦してみたつもりです。もはや、時代の変化は激しく、国際情勢の変化もわれわれを待ってくれません。是非、この難局を抜け出すために、社員全員、また国民全員、総力戦で戦うヒントを少しでもつかんでもらえるとうれしいです。
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■書籍情報
『「場当たり的」が会社を潰す』
著者: 北澤 孝太郎
出版社:新潮社
価格:778円(税込)
※この記事は、アイティメディア株式会社の許諾を得て
「ITmediaエグゼクティブ『ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術』」
の連載から転載したものです。無断転載を禁じます。
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