2021/06/08
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社長を目指す方程式
第67回
あなたの身近に潜む“危険なリーダー”その特徴と身を守る術
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- 井上 和幸 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
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今回の社長を目指す法則・方程式: ビル・エディ「いかさま王の3つの特性」 |
上司としては、事業やチームを預かる身としても、もちろん自分自身のキャリアのためにも、無用な対立や危険人物に巻き込まれないことは非常に重要です。そういった相手をどう見極め、防御、対処すれば良いのでしょう?
架空の危機を煽る“危険なリーダー”
あなたにとって理想のリーダー像とはどのようなものでしょうか? 特に現在のコロナ禍という「有事」におけるリーダーには、強いメッセージと国民や社員たちをグイグイ引っ張るカリスマ性を求める傾向が強まります。そして、こうした「ヒーロー待望論」が強まる時期には、真のヒーローと共に、危険なヒーローが現れやすいのも時代の織りなす綾です。ヒトラー、ムッソリーニ、毛沢東、スターリン、トランプ。政治の世界ではこうした人物たちが、国を救う救世主として現れ、結果として自国や世界を破壊してきました。国家レベルから日常レベルまでの対立紛争を解決するハイ・コンフリクト・インスティチュートのコンサルタント、ビル・エディは著書『危険人物をリーダーに選ばないためにできること』で、彼らのメッセージには共通したフォーマットがあることや、その特性である<対立を煽り自分の地位を築こうとする「いかさま王」>について紹介していて、非常に興味深いです。
上記の政治家たちのメッセージに見られる共通フォーマットは、このようなかたちです。
「いま、私たちに恐ろしい危機が迫っている!」
「その原因は、あの忌まわしい悪者だ。この悪者はとことん邪悪なので、滅ぼさなければならない」
「私たちは素晴らしいヒーローに従う必要がある。ヒーローはすぐに悪者を退治して危機を解決してくれるだろう(そのヒーローは、私だ)」
ビル・エディはこれを「架空の危機の三段論法」と呼んでいます。
これ、どうでしょう? 政治家だけではなく、識者やコンサルタントたちもメディア向けに使う論調ですし、救世主型の経営者も同様のメッセージを社内外に発信することがよくあります。
さらにもっと身近な例として、あらゆる組織でこうした論法で<敵陣の掃討に立ち上がる人>は、折々現れますね。もしかしたら、いま、上司のあなたが直接関わる組織の中にも存在しているかもしれません。
「ナルシスト」「ソシオパス」の攻撃を見抜け!
ビル・エディは様々な対立紛争を解決する活動を通じて、こうした行動に出る人物には「ナルシスト」と「ソシオパス」がいることを明らかにしました。「ナルシスト的(自己愛性)パーソナリティ」の持ち主は、自分のことで頭が一杯です。自分には特別扱いされる資格があると思い、壮大な構想を持ち、無限の成功、無限の権力を夢見ています。
ナルシストは、他人より上だと見なされること、他人より上位に立つことばかり考えています。自分が上だと見せるため、他者を下に置かないと気が済まないのです。
「ナルシスト」が対立を煽るときの言動の特徴には、次のようなものがあります。
・他者よりも上に立ちたがる
・壮大な構想
・無限の権力を持つという妄想
・他者への共感の欠如
一方、「ソシオパス的(反社会性)パーソナリティ」の持ち主は、他人を支配し、恥をかかせることができる立場を好みます。衝動的、攻撃的人物です。
「ソシオパス」が対立を煽るときの言動の特徴には、次のようなものがあります。
・支配欲
・欺瞞(嘘や言いくるめ)
・強い攻撃性
・良心の呵責の欠如
この「ナルシスト的(自己愛性)パーソナリティ」「ソシオパス的(反社会性)パーソナリティ」の持ち主は、おおよそ10%くらいは存在しているそうです。皆さんの周囲にも思い当たる人、いらっしゃるのではないでしょうか。
彼らは自分の欲求を満たすために<感情戦>を仕掛けてきます。
攻撃相手を定めたら、1)攻撃の片棒を担ぐ人を手なずけ、2)非難の標的を攻撃、3)コミュニティを分断、4)より多くの人たちを支配、という流れです。そのために、上記の「架空の危機」「架空の悪者」「架空のヒーロー」を設定、活用するのです。
近年では彼らの活動を助長、支援するものとしてSNSなど「感情を煽るメディア」が存在しています。もともとヒトラーなどは、当時のマスメディアを「感情を煽るメディア」として非常にうまく使ったわけですが、現代ではそれ以上のことがSNSを通じて容易にできてしまいます。
ともすれば、SNSは(悪意なく)「架空のヒーロー」を祭り上げ、彼の意図通りに「架空の危機」を喧伝し、「架空の悪者」を総バッシングに走ります。冷静に考えれば、非常に恐ろしい環境に私たちは身を置いているとも言えます。
なお、対立を煽るパーソナリティの特徴には、次のようなものがあります。
・標的とした相手を執拗に避難する
・何にでも白黒をつけずにいられない
・攻撃的な感情を抑制できない
・極端に否定的な態度を取る
対立を煽るパーソナリティの持ち主は、本人は気が付いていないことが多いですが、強烈な衝動に従って自分が敵とみなした相手をコントロールしたり、排除したり、破滅させようとします。最終的には自分自身をダメにしてしまうのですが、彼らにはそれがわからないのです。
ナルシスト、ソシオパス、いずれかあるいは両方が対立を煽るパーソナリティと組み合わされると、その人物は「王」「独裁者」「全てを支配する最高権力者」になりたがります。ビル・エディはこの人たちを「いかさま王」と名づけています。
対立煽り、フェイクニュースからの護身術
上司の皆さんは、こうした「ナルシスト的(自己愛性)パーソナリティ」「ソシオパス的(反社会性)パーソナリティ」の持ち主による偏った意見、個人的な思い込み、対立する意見の相手への執拗な攻撃から、チームやメンバー、自社を護らなければなりません。その防御策として、ビル・エディは次の2つを紹介しています。
・「EARステートメント」=共感・配慮・敬意(Empathy,Attention and Respect)に基づくコミュニケーション
・「BIFF対応」=簡潔で中身のある、友好的でしっかり毅然とした(Brief,Informative,Friendly and Firm)対応
詳しく知りたいかたはぜひ『危険人物をリーダーに選ばないためにできること』をお読みいただければと思いますが、要するに、彼らの攻撃に対して冷静に、こちらは攻撃的にならず、友好的姿勢で、事実に基づく確認を行い、相手のいうままにならず、違うと思うことはしっかり攻撃者および周囲に伝えることだと言います。
もし渦中に巻き込まれた当事者になってしまった際は、かなり勇気のいることですし、上司として被害に合っている誰かのレスキューに当たる際は気が重いことではありますが、社長を目指すリーダーとしては、ナルシストやソシオパスが跋扈(ばっこ)できない組織風土を作ることは非常に重要な責務です。頑張りましょう。
最後に、ビル・エディは、フェイクニュースに騙されないためのチェックポイントもあげてくれていますので、ご紹介します。
◆フェイクニュースを分析する質問
・そのニュースは本当に正しいか
・ニュースの背景は?
・数字や統計は正しいものか?
・専門家も同意しているか?
・ニュースソースははっきりしているか?信頼できるか?
・他のニュースはどう言ってる?非難されている対象は本当に悪者か?
・危機を語っている人物は本当にヒーローか?
・その人物はこの話をすることで個人的な利益をえるか?
発信者の真の意図を常に確認しようとする姿勢が欠かせませんね。
* * *
支配すること自体が目的の「ソシオパス」「ナルシスト」は、あなたたちのすぐそばにいるかもしれません。<ポスト・トゥルース>の時代、これからの上司はこれらを見抜き、対抗できるスキルも必須となっているのです。しっかり対応し、健康的な組織・チームを保ちましょう。
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