TOP 編集部オリジナル特集 経営者・専門家各位による2020-2030年近未来予測

2020/01/30

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編集部オリジナル特集

第1回

経営者・専門家各位による2020-2030年近未来予測

  • 編集部オリジナル
2020年代のスタートという節目を迎え、本企画ではエグゼクティブ各位に「これから10年で成長・拡大する注目産業」についてアンケートを実施。エグゼクティブ各位が今後注目する産業のランキングとその領域で事業成長を遂げられている経営者や専門家が見る10年後の未来予測を発表いたします。

 

ぜひ、ご自身でも今後の10年の変化を想像しながらお楽しみください。

 

 

エグゼクティブ101名が予測、これから10年で成長・拡大する注目産業は?

トップ3は上記のような結果となり、それ以外にはロボット、自動車・自動運転、シェアリング、エネルギー、SDGs・ESGなどもキーワードとしてあがりました。

<注目産業とご自身の事業との重なりは?>

今後の注目産業にご自身の事業分野が携わっているか伺うと、 57.4%が「事業で携わっていない」、 32.7%が「事業で携わっている」との回答になりました。

 

今後の注目産業で活躍する経営者各位や専門家に10年後の未来予測を伺いました。

 

■モビリティ業界の 2020 – 2030 近未来予測

JapanTaxi株式会社 代表取締役社長 執行役員CEO 川鍋 一朗氏

これからの10年間で起きる一番大きな変化は、タクシーやバス、トラックの垣根がなくなり、3つが融合した新しい移動手段が生まれることです。 融合させたほうが効率的なので過疎地を中心に進み、事業用免許もひとつになっていくのではないかというのも私の見立てです。

また、自動運転も相当進みますが完全に無人運転にはならず、人が運転席に座っている状況は続くでしょう。その場合も9割方は自動で運んでくれるものの、例えば角を曲がってすぐに違法な路上駐車があるなどのイレギュラーなケースでは止まってしまうでしょう。そのため、タクシーの場合、乗務員はドライバーという役割よりは、ホスピタリティを発揮したアテンダントのようになると思います。

 

 

――今後川鍋さんご自身や日本交通、JapanTaxi社として実現したいことは?

 

10年後も私自身はモビリティをやり続けていることは間違いありません。私は運命を持って生まれてきて、自分の人生、ピボットはないと考えています。

タクシーやバス、トラックの融合体のような、地域密着のラストワンマイルに携わる。ヒトやモノ、そして情報も運ぶ。そういったモビリティを何らかの形でオペレートする立ち位置になっていればと思いますし、少なくとも日本の中では、リアルとITを駆使して新しい経営モデルを創りたいです。

 

東京を中心に乗務員の平均年齢が若返っており、私が会長を務める日本交通でも、今年の4月に200数十名採用の新卒採用の乗務員が入社予定です。今後は働き方の面でもノマドタクシードライバー制度のようなものを考えています。タクシーは二種免許を持っていれば全国どこでもすぐに働けるので、各地で受け入れ態勢を整えれば、ITプラットフォーム上で管理しながら勤務地に縛られない働き方が実現できます。これは今年中にはスタートを切り、働きやすい環境づくりにも力を入れていきます。

 

株式会社スマートドライブ 代表取締役 北川 烈氏

MaaSとかCASE(※1)で言われる、自動運転はまだそこまで普及はしないと思います。スピードとしてはコネクティッドが一番先に、続いてシェアリングや電気自動車が普及してくると思います。 市場のシェアだと現状の10倍くらいにはなるのではないかと見ています。

また、移動に関するデータについて大きく2つの変化が起きると思っています。

1つ目は、データ分析においてAIやディープラーニングのような要素技術自体がコモディティ化することです。そのAIを使って「どのように分析・活用するか」という方向にフォーカスするようになってくると思います。

2つ目は、実際にユーザーの課題解決に役立つような手触り感のある分析が求められることです。例えば自動運転の技術は進んできているけどそれを活用して具体的に何ができるのか、どんな課題解決に繋がるのか、よりリアルな部分が今後はさらに重要になると思います。

 

 

――今後北川さんご自身やスマートにドライブ社として実現したいことは?

 

実現したいことは2つありまして、まずは弊社のプラットフォーム「SmartDrive Data Platform」自体をユーザー数だけでなく、提供できる価値や国を拡大していくこと。

今後MaaSやCASEがさらに普及すると業界構造自体が大きく変わります。例えば自動車メーカーや保険会社はいままでエンドユーザーに直接サービス提供をしていたものが、相対する相手がMaaS事業者に変わるなど、BtoCだったものがBtoBに移行していくということが起こってきます。

そこで弊社がハブになることで、モビリティ業界全体の構造改革や変革をつくるムーブメントを起こすなど、自分で言うのはおこがましいですけれども、業界全体を盛り上げるような動きをとっていきたいというのが2つ目に実現していきたい事です。

 

※1:CASE「C=Connected(コネクティッド=ネットワークへ常時接続したつながるクルマ)」「A=Autonomous(自動運転)」「S=Shared&Service(シェアリング&サービス)」「E=Electric(電動化)」という4つの頭文字をもとにした造語

■ヘルスケア業界の 2020 – 2030 近未来予測

株式会社CancerTechnologies 代表取締役 原 拓也氏

三大死因に該当する、「がん(悪性新生物)」「心疾患(急性心筋梗塞)」「脳卒中」の10年後の未来は明るいと思います。従来は病気にかかってから治療をすることが一般的でしたが、今後は予防や早期発見など未病領域の技術が進んでいきます。 具体的には、例えば遺伝子診療やゲノム解析によって、なぜ病気になり、病気にならないためにどのような生活をしたら良いのかまで実行していく国が増えてきています。

個人の疾患原因や傾向をいち早く先読みすることによって未然に病気を防ぐことが今後の予防医療領域の未来ではトレンドになってくると思います。また、病気になる前に免疫力を上げ、病気を未然に防ぐという免疫療法も徐々に研究がなされ始めています。つまり、単純に寿命が伸びるだけでなく健康な状態での寿命が伸びる「健康寿命」への着目がより高まっていくことでしょう。今後は、治療技術の進化に加え、病気にならないための技術の進化によって健康な人々が増え、より明るい未来になっていくと思います。

 

 

――今後、原さんご自身やCancerTechnologies社として実現したいことは?

 

予防で健康寿命をのばす未来を実現するために、未病領域で保険外診療に特化した健診に最も力を入れていきます。その理由の1つは早期発見のためです。人間ドックの紹介や病院とパートナーシップを組み、病気を未然に防ぐサービス展開をしていきます。また、病気になる原因を追及していくことで未病領域の生体データが蓄積されるので、そもそも病気にならない体づくりができるサービスを今後提供していきます。

健康寿命を伸ばす分野で、生体データを元に病気になりにくいサポートができるサービス展開をしていきます。

 

 

シーメンスヘルスケア株式会社 

シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス株式会社

代表取締役社長  森 秀顕氏

これから10年で高齢化がさらに進むとともに、生産人口は減少するため、費用対効果の高い医療を実現し、医療費増加に歯止めをかけなければ日本の医療制度を維持することはできません。 また、高齢者を含む人口が減りはじめるため、医療機関同士の競争は激しさを増します。

経営効率を上げるとともに必要な投資を行い、患者から選ばれる医療機関になることが生き残りに必要な時代に突入するでしょう。

 

そのため、より費用対効果の高い医療の必要性が増し、個別化医療、精密医療と言われる患者にテーラーメード化した診断や治療の開発、普及が進むと思います。

また、「サービス業としての医療」がより注目され、遠隔サービスや患者の満足度を上げるための取り組みが活発化するでしょう。

 

これら全てに貢献するものとして、ビッグデータを活用したAIやロボットによる治療、患者の診療情報への自由なアクセスなどデジタル化が進みます。

医療機関の統合・再編も日本では遅れておりますが、今後加速すると思われます。

 

 

――今後、森さんご自身やシーメンスヘルスケアとして実現されたいことは?

 

シーメンスヘルスケアのビジョンは、最高の価値の提供と自らの成長を通じて、医療にかかわる人々にとって“信頼されるパートナー”になることです。

 

ここでいう最高の価値として下記の4つを掲げています。

・プレシジョン・メディシンの拡充

・医療サービス提供の変革

・ペイシェント・エクスペリエンスの向上

・医療デジタル化の推進

 

具対的な例をいくつか揚げさせていただきます。

まず、診断や治療領域におけるAIソフトウェアを今後さらに開発、リリースしていきます。これにより、より精度の高い医療や、医師の効率的なサービス提供に貢献したいと考えています。

また、メーカーとして製品を販売することに注力するだけでなく、サービス料をいただくモデルも普及させていこうと考えています。高額な医療機器への投資による顧客の経営リスクを軽減するため、製品を我々で資産として保有したまま設置させていただき、使用料をいただくというモデルです。顧客が長期的によりよい医療サービスを提供でき、ペイシェント・エクスペリエンスの向上に繋がるよう、サポートをしたいと考えています。

そのほか、M&Aも積極的に行う予定で、患者のQOLにダイレクトに繋がる治療領域をはじめとしたポートフォリオの拡充を図っていく予定です。

そして、そのような価値を提供する社員が、よりモチベーション高く成長しながら仕事ができる会社にしたいと思います。その先に真に信頼されるパートナーになれる道が開いていると思っています。

 

■ロボット業界の 2020 – 2030 近未来予測

大阪大学 栄誉教授  石黒 浩氏

今後10年で最も変化することはロボットの「コミュニケーション力」。 Google Home(グーグルホーム)やAmazon Echo(アマゾンエコー)などのスマートスピーカーは現状音楽の切り替えや家電操作などが主流でちゃんとした対話はまだ難しいです。

ただ、今後はそこに顔や表情、身振り手振りがつき、対話型のロボットとして進化していくと思います。各家庭の中での対話型ロボットとしてはもちろん、ホテルでコンシェルジュをしたり、学校で英語を教えたり、タクシーの中でお客さんの案内をするなど。他にも、高齢者との対話や自閉症の子供との対話など、活躍する領域は幅広いでしょう。

 

一方でアンドロイドは今後も一般化はしないでしょう。著名人のアンドロイドをつくることはあると思いますが、高価で特殊なため、量産ができません。

 

 

――今後、石黒先生ご自身が実現されたいことは?

 

アンドロイドの基礎研究はずっと続けるものの、実社会において人間と親和的に関わり、人間と共生するための自律型ロボットの実現を目指します。

作業効率化や生産性向上のための産業用ロボットはすでに歴史もあり、今後も幅広い用途でさらに使われると思います。これから重要なのはコミュニケーションや日常生活のなかで今までと違う目的で使えるかどうかだと考えています。

 

■リテール業界の 2020 – 2030 近未来予測

株式会社カインズ 代表取締役社長 高家 正行氏

国内の小売市場は、生産年齢人口の減少や高齢化の進展などマクロの面で見ればマイナス基調です。 一方リテールビジネスは、消費財に近いほど資金繰りは良好であり、投資判断を間違えなければ、店舗拡大で成長が期待できる。従って、緩やかなマクロ環境の悪化に鈍感になり、長年オーバーストア状態に置かれているといえます。

しかしながら、今後10年の近未来を見通すと、業界としては健全な淘汰があると思います。

 

既に欧米では、業態の中で生き残っているのはトップの1,2社だけです。そのうえで、業態間さらにはオンラインやメーカー(D2C)との競争がし烈になってきています。

そのような状況の中で生き残るにはユニークな付加価値が必要だと思います。

リテールにおいての付加価値は

・商品での付加価値

・(広義の)購買体験での付加価値

の2点が重要だと思います。特に後者は、昨今のAIやデジタルを駆使していかないと生き残りが難しいと感じており、当社でもデジタル領域に積極的に投資をしています。

 

 

――今後、高家さんご自身やカインズ社として実現されたいことは?

 

10年後もカインズが「リアル店舗プレイヤー」であることは間違いないです。ただ、従来のリアル店舗の価値は、そこに欲しい商品があることでしたが、これからはそれだけではダメです。むしろ、その価値はどんどん下がってくるかと。“店舗がメディア化”して顧客とリアルにつながる、オンラインや紙面のメディアと異なり、リアルの世界は、商品の触感や嗅覚なども含めた購買体験では、いくらAR,VRなどの技術が発達しても一日の長があると思います。我々は、オリジナルな商品価値、そしてオンラインからオフラインへとつながったリアル店舗ならではの顧客体験(価値)を発揮したいと考えています。

そのために、昨年より中計「PROJECT KINDNESS(プロジェクトカインドネス)」をスタートし、“次のカインズをつくる”を目標に取り組んでいます。

■経営者JP 代表取締役 井上和幸のコメント

やはり圧倒的1位は「AI」でした。調査対象の世代観もあるかもしれませんが、2位・3位は「ヘルスケア」「医療」と健康関連での業界注目が高いという結果に。いずれも高度なテクノロジーの進展による変革が大きく起こりつつあるジャンルへの関心・注目が高く寄せられました。

これまでの20年間は「× NET」による産業変革・社会変革が推し進められてきましたが、次の20年は間違いなく「× AI」があらゆる産業の構造を変え、私たちの生活を一新するでしょう。その時代の流れにどう対応し、乗るのか、あるいは先取るのかが大きく問われ始める2020年となりますね。

 

 

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