TOP 経営者がおさえておきたい、HR5大重要テーマを語る 相互補完的な「モザイク型」の働き方へ。―多様な人が活躍できる「業務改革」「仕事環境改革」―(1/5)

2018/01/08

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経営者がおさえておきたい、HR5大重要テーマを語る

第1回

相互補完的な「モザイク型」の働き方へ。―多様な人が活躍できる「業務改革」「仕事環境改革」―(1/5)

  • スペシャル対談
  • 組織
 

「経営者を語る。」――今回は、豊田義博氏(リクルートワークス研究所・主幹研究員)をゲストにお迎えします。

テーマは「経営者がおさえておきたい、HR5大重要テーマを語る」。
多様な人が活躍できる職場環境とは?
働きがいと誇りを感じられる仕事の与え方とは?
人生100年時代にあって従業員の一人ひとりがキャリアオーナーシップを持つための支援とは?――
など、これからの企業経営におけるHR領域での5つの重大テーマについて、豊田義博さんと弊社代表・井上和幸で語り合っていただきました。全5回でお届けします。

 

 

井上 総論的にはなりますが、まずは、豊田さんが最近感じていらっしゃることからお伺いできればと思います。

 

豊田 われわれの組織(リクルートワークス研究所)は、大企業を中心とした日本の主要企業の人事の方々との対話を重視してきました。これまで日本の社会は、大企業が何らかの形でリードしてきましたし、変革の先兵となってきた――というスタンスで取り組んできたわけです。組織としては今もスタンスは変わらないのですが、ただ個人的には、大企業にはもう変革の力はないのではないか? と、ここ何年も前からひしひしと感じ始めています。

 

井上 確かに、戦後から高度経済成長期を経て「失われた10年」といった言葉が定着する頃あたりまでは、まず大企業が何かを取り入れ、変革の先鞭を付けたところからテーマが立ち、社会が動くというところがあったと思います。ところが、最近は大手企業というと、メディアも悪い気がするのですが、どちらかと言えばいつも謝っていたり、不祥事を報道されたり、といった印象が強い。逆に、新しいものは、ベンチャーや新しい領域の人たちの話になっているところがありますよね。

 

豊田 正直、それは感じますね。ベンチャー企業・新興企業は、いつの時代もあったわけですが、それは社会的に言うと、「アナザーサイドに面白いものができている。これはこれでいいよね」という感覚だったと思います。そして、「やっぱりメインストリームが世の中をつくっているし、大企業が世の中を変えていく」あるいは、「大企業がイニシアティブをとらなければ……」という感覚は失われた10年の間にもあったし、われわれも議論していました。ところが、最近はベンチャー企業や新興企業が、ある意味でメインストリームになっていくような感覚を持っています。

 

井上 もちろん、大企業さんも当然チャレンジは続けていると思いますが、それが「未来に向かって行くぞ!」というよりは、何か「苦しみの中での英断」みたいな取り上げ方をされることが多い気がします。トヨタ自動車のようなナンバーワン企業でさえ、何か辛そうなニュースとして伝わってくるのが、ある意味、今の日本を象徴しているような気がしますね。
さて、それはともかくとして、今回は豊田さんからあらかじめ5つのテーマをいただいています。今の話から、半ば強引に(笑)第1のテーマ《多様な人が活躍できる「業務改革」「仕事環境改革」》に入っていきたいと思います。

 

豊田 個々の企業というより、マクロ文脈として、「人手不足」ということがありますよね。でも、人手不足と言いながら、実は働きたいけれど働けていない人はたくさんいる。もうあきらめて労働市場に出てきていない人たちです。「失業率の数字より実は大きなボリュームゾーンがある」というデータがあって、その状態は非常に望ましくない。
本当は、企業側がその人の持ついろいろな能力や知識といったものをもっと活用するための「業務改革」「仕事環境改革」に創意工夫をこらしていかないといけなくて、そうでないと、日本の今のポテンシャルは、どんどんシュリンクしていってしまうと思います。「リモートワーク」とか、就業時間の問題といった施策も大切だとは思いますが、それは手段のワンオブゼムに過ぎません。以前、当研究所では、『2025年 働くを再発明する時代がやってくる』というレポート出しているんですが、この中でも、働く人を社会的に増やしていかないと日本はジリ貧になってしまう、という話をしています。

 

井上 とても興味深く拝読しました。同レポートにはこうありますね。「これまでの人材の多様化は、雇用形態の区別など別制度下におくことで実現されてきた。しかし、2025年にかけては、多様な人材を職場レベルでインクルージョン(包摂)していかなければならない」――。いわゆる「モザイク型」の働き方ということですが。

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プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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  • 豊田 義博氏

    豊田 義博氏

    リクルートワークス研究所 主幹研究員

    1983年東京大学理学部卒業後リクルート入社。就職ジャーナル、リクルートブック、Worksの編集長を経て、現在は研究員として、20代の就業実態・キャリア観・仕事観、新卒採用・就活、大学時代の経験・学習などの調査研究に携わる。著書に『なぜ若手社員は「指示待ち」を選ぶのか?』(PHPビジネス新書)、『若手社員が育たない。』『就活エリートの迷走』(以上ちくま新書)、『「上司」不要論。』(東洋経済新報社)、『新卒無業。』(共著 東洋経済新報社)などがある。

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