2018/01/29

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スペシャルコラムドラッカー再論

第107回

職務設計の間違い。

  • エグゼクティブ
  • マネジメント
成果をあげるために、日々、仕事をしている、事業を執行している、経営に携わっている——。

このことに「NO」という人は、どの立場であっても、基本的にはいないだろう。

なのに、足元の業務から課や部の成果、事業の成果、経営の成果を、自分が思い描く通りに上げることの、なんと難しいことか!
一体、なにが間違っているのだろうか?

「マネジメントの仕事に関して、正しい職務設計を保証する公式はない。しかし、マネジメントの働きを妨げる間違いを知り、それを避けることはできる。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』、1973年)

ドラッカーは、このように述べている。

まず第一に、最も一般的な間違いとしてドラッカーが挙げるのが、「仕事を狭く設計し、人が仕事で成長することを妨げること」についてだ。
それは、なぜか?

ドラッカーは、このことが必要な理由に、「やりがい」の大切さを挙げている。

数年ですべてを身に着けられる程狭く設計された仕事では、早晩、欲求不満に陥ると。
その弊害は、変化、イノベーション、新しい考えへの抵抗として現れ、自らの保身に走り、その状況では自分が大きな貢献を果たしていないことを自覚するがゆえに、常に不安を感じるようになる、と。

こうした状況をもたらすため、小さく設計された仕事は、人と仕事を知らない間に麻痺させるのだと、ドラッカーは強調する。

「したがって、マネジメントの仕事は、その職にある限り、学び、育つことのできるものにしなければならない。大きく設計した仕事が害をなすことはない。たとえ害があっても、直ちに直すことができる。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

仕事は、常に、すべて、成果を通じて喜びを与えるものである必要があり、挑戦的で報われるものでなければならない。こう、ドラッカーは言う。

「仕事の喜びが昇進であったのでは、仕事に意味がなくなる。単純な算術の問題として、昇進の期待は裏切られるほうが多い。昇進をもって報酬や報奨とすることは間違いである。重視すべきは現実の仕事であって、次の仕事ではない。」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)

マネジメントが成果をあげるには、そもそも、その仕事は組織の目的の達成に必要な課題を中心に組み立てられなければならない。
その課題をクリアするために行うべき具体的な活動や貢献が、マネジメントの仕事を規定する。マネジメントの仕事は、組織が直面する課題によってのみ規定され、それはできることならば評価測定できるものであってほしい。

ドラッカーはこのように解説する。これを次回以降も更に掘り下げていってみたい。

プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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