TOP スペシャルコラムドラッカー再論 イノベーションと生産性。

2017/01/23

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第58回

イノベーションと生産性。

  • マネジメント
  • 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO 井上和幸

企業は、経済の成長発展と共にある。
 
「静的な経済には、企業は存在しえない。企業人さえ存在しえない。そこに存在しうるものは、手数料をもらうだけのブローカーか、何の価値も生まない投機家である」(『マネジメント–-課題、責任、実践』、1973年)
 
ドラッカーは、企業が存在しうるのは、成長する経済においてのみ、あるいは少なくとも変化を当然とする経済においてのみであると断定する。「そして企業こそ、この成長と変化のための機関である」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)
 
そこから導き出されるのが、マーケティングと両輪をなす、イノベーション、の必要性だ。
企業の第二の企業家的な機能=イノベーション、すなわち、新しい満足を生み出すことだ。
 
我々は、既存の財やサービスを提供し続けるだけではなく、よりよい、より経済的な財やサービスを常に生み出し、供給しなければならい。
 
「生産的なイノベーションとは、単なる改良ではない。それは新しい欲求の満足をもたらす財とサービスの創造である。そのような製品の価格は、かえって高くなる。しかし全体としての効果は、はるかに経済的である」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)
 
イノベーション、と聞くと、発明や技術的なことを想起しがちだが、ドラッカーが言うイノベーションとは、それに限定されるものではなく、経済や社会のコンセプトを指している。
経済的なイノベーションや社会的なイノベーションは、技術的なイノベーション以上に重要であると説く。(例として、蒸気機関の役割と同等以上に、銀行融資の仕組みや損害保険制度、あるいは割賦販売が一般市民に与えた生産器具や生活財の獲得機会の拡大による経済発展へのインパクトなどを、ドラッカーは挙げている。)
 
こうしたイノベーションにより、顧客は創造されていく訳だが、この「顧客の創造」という目的を達成するには、富を生むべき資源を有効活用しなければならない。
資源を生産的に使用しなければならない。
 
「これが企業の管理的な機能である。この機能の経済的な側面が、生産性である」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)
 
昨今、過重労働問題などで改めて光が当たっている「生産性」問題。
これについても、ドラッカーは、既に半世紀前に述べていた。
 
生産性に重大な影響を与えるものとして、ドラッカーが挙げているのは、ひとつには「知識」、次に「時間」だ。
これらは正しく使われたときに生産性を向上させるが、間違って使われるときに著しく生産性を損ねることとなる。
 
「しかし、最も生産的でありうる半面、最も非生産的たりうる資源が、トップマネジメントとしての時間である。ところが、このマネジメントの時間の生産性ほど、知られず、分析されず、マネジメントされていない生産要素は他にない」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)
 
どういう部分で、ドラッカーはトップマネジメントの時間の使い方についての生産性の差を語っているのだろう?
 
曰く、「得手不得手による違い」を、ドラッカーは挙げている。
 
「いかなるマネジメントといえども万能ではない。いかなる企業といえども収益が見込める事業すべてに進出すべきではない。あらゆるマネジメントに独自の能力と限界がある。自らの限界を超えるならば、いかに有望な事業であっても失敗は目に見えている」(『マネジメント–-課題、責任、実践』)
 
ここから続いてドラッカーは、企業の目的とミッションについて触れていくのだが、ここではフォーカスの重要性を、生産性向上の鍵との関連において、確認しておきたい。
 
最も重要で特異なことに、知識と時間を使う。さて、出来ているだろうか?

プロフィール

  • 井上和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。