TOP スペシャルコラムドラッカー再論 成果をあげる実行プロセス(前篇)。

2016/06/20

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第31回

成果をあげる実行プロセス(前篇)。

  • エグゼクティブ
  • マネジメント
  • 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO 井上和幸

成果をあげるためには「アクションプランをつくる」「意思決定を行う」「コミュニケーションを行う」「機会に焦点を合わせる」「会議の生産性をあげる」の5つのプロセスが必要だとドラッカーは言う。
今回と次回で、この5つについて紹介してみよう。
 
まず、「アクションプランをつくる」。
 
ここはドラッカーも、さほど特別なことは言っていない。いつまでに、どれだけの成果をもたらすべきか、について考えよ、と。しかしその上で、制約条件への目くばせが大事だとドラッカーは説く。「倫理的に正しいか」「組織内で理解を得られるか」「法律的に問題ないか」「組織としてのミッション、価値観、方針にあっているか」など。「これらの問いへの答えが成果を約束するわけではない。しかしこれらの制約を無視するならば、いかなる行動といえども、間違ったもの、成果を期待しえないものになることは間違いない」(『経営者の条件』1966年)
 
アクションプランは、柔軟性を当然のこととしなければならないと、ドラッカーは念を押す。「アクションプランとは意図であって、絶対の約束ではない。拘束ではない。一つひとつの成功が新しい機会をもたらし、一つひとつの失敗が新しい機会をもたらずがゆえに、頻繁に修正していくべきものである」(『経営者の条件』)
 
また、アクションプランは時間管理の基準としても必要であると言う。「時間こそ最も希少で価値のある資源である。(中略)アクションプランなくしては、すべてが成り行き任せとなる。途中でアクションプランをチェックすることなくしては、成り行きの中で意味のあるものとないものとを見分けることすらできなくなる」(『経営者の条件』)のだ。
 
次に、「意思決定を行う」。
 
意思決定が意思決定足るためには、次の4つのことを決める必要がある。
 
(1)実行の責任者
(2)日程
(3)影響を受けるがゆえに決定の内容を知らされ、理解し、納得すべき人
(4)影響を受けなくとも決定の内容を知らされるべき人
 
「組織で行われている意思決定のうちあまりに多くが、これらのことを決めていなかったために失敗している」(『経営者の条件』)
 
意志決定は、それを行うときと同じ慎重さで、定期的に見直す必要があるとドラッカーは言う。
定期的な見直しは、特に人材採用、配置、昇進において、特に重要だと、ドラッカーは強調している。
 
「意思決定の定期的な見直しは、自己開発の手段ともなる。意思決定の結果を期待に照合するならば、自らが強みとするもの、改善すべきもの、知識や情報の欠けているものが明らかになる。自らの偏りも明らかになる」「そもそも結果があがらなかったのは人事を誤ったためであることも明らかになる。最高の人材を最高のポストに配置することは容易ではない。最高の人材は常に多忙だからである」(『経営者の条件』)
 
意志決定とはトップが行うものであり、トップが行う意志決定だけが重要であるような主張があるが、それは大きな間違いだとドラッカーは言う。
 
「組織としての意志決定はスペシャリストから現場の経営管理者まであらゆるレベルで行われている。知識を基盤とする組織では、それぞれの意志決定が重要な意味をもつ。知識労働者とは、自らの専門分野、例えば税務については他の誰よりも知っているべき者であり、その意思決定は組織全体に大きな影響を与えるはずのものである」(『経営者の条件』)
 
意志決定の能力は、トップのみならず、組織のあらゆるレベルにおいても致命的に重要なスキルなのだ。
全体の意志決定の誤りは当然経営を狂わせるが、部分の意志決定の過ちもまた、事業が成果を生み出すことをはばむものであることを、我々は知っておかなければならない。

プロフィール

  • 井上和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。