TOP 人生100年時代のキャリアとリーダーの組織行動 日米で異なる「経営幹部が就任後に行うべきこと」を知っておくことの重要性。(4/5)

2017/07/18

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人生100年時代のキャリアとリーダーの組織行動

第4回

日米で異なる「経営幹部が就任後に行うべきこと」を知っておくことの重要性。(4/5)

  • キャリア
  • スペシャル対談
  • 組織
  • 井上 和幸 株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
  • 古野 庸一氏 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 組織行動研究所 所長
井上 昨年御社で出された『マネジメント人材育成ハンドブック』を興味深く拝見したのですが、次世代のリーダーやマネジャーを育成するために必要な6つのテーマを、ストーリー仕立ての記事やインタビュー調査、最新研究の紹介などで解説してあり、マネジメントに当たる方々にとって非常に良い教材ですね。今回はそのあたりからお伺いします。
エグゼクティブサーチを行っている僕の立場からは、「経営幹部が就任後に行うべきこと」に関する調査結果と研究案内はとても参考になりました。未知の組織を任されて苦労することが多い経営幹部の方にとっては、目からウロコの内容ではないでしょうか。

 

古野 要するに、経営幹部には就任後90日間でやらなければならないことがある、ということですが、こういう書籍はアメリカの方が多くて、日本にはあまりありません。今回、僕たちの調査でわかったのは、実は日本とアメリカは違うということです。
リーダーとして就任後は、どのような戦略・方針で行くのかを作ると同時に、「この人って結構イケるね」というように、部下から「いい人」だと思われなければなりません。戦略の打ち出しと信頼の蓄積の両方をやらないといけないわけですが、アメリカの本を読むと、どちらかというと戦略をボンボンボンと打ち出すみたいなことが書いてあります。

 

しかし、日本の場合、成功している経営幹部は、そうした「有能性」よりも、まずどうやって信頼を獲得していくかという「同調性」に重きを置いた行動をとっていました。打つ手は結構わかっている。わかっているけれど、そこで自分が誇示するように上から言った瞬間に、部下たちは冷めて逃げていく。それを自分で言うのではなく、みんなに言わせるなど、バラエティの持たせ方をわかっている人は上手く成功しています。

 

また、成功している人は、まず部下の一人ひとりにインタビューを行って、入社動機や存在理由、あるいは、企業や組織の歴史・文化などを尋ねていました。そうして同調性を示しつつ、「有能性」のベースとなる情報を手に入れていたわけです。これは、僕が経営幹部にインタビューしていても、非常に感心した部分でしたね。アメリカの本をうかつに真似したら失敗すると思いました。
ただし、非常事態に陥っている経営再建の場合は例外で、この調査でインタビューした方も、「同調性」にかまわず改革に着手していました。

 

井上 特に落下傘で入っていく形は、日本では上手くいかないことが少なくありませんね。

 

古野 この冊子では、「上手くいかないことがわかっていないとダメですよ」ということを言っています。ところで、組織を改革していくときには、やはりコンサルタントの経験は大きいと思いますね。例えば、戦略の見立てを作る力が高いことや、プロジェクトマネジメントが上手だということ、そして、インタビューをする技術も高い。そうしたことを全部ひっくるめて考えるとコンサルの技術は役に立ちます。ただし、それで上手くいくと思うのは勘違いで、どうやって人を上手く乗せながら動かしていくか? というところが長けてないと、逆に失敗してしまうという話です。

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プロフィール

  • 井上 和幸

    井上 和幸

    株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO

    1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。

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  • 古野 庸一氏

    古野 庸一氏

    株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 組織行動研究所 所長

    1987年東京大学工学部卒業後、株式会社リクルート入社。南カリフォルニア大学でMBA取得。キャリア支援に関する事業開発、NPOキャリアカウンセリング協会設立に参画する一方で、リーダーシップ開発、キャリア開発に関する研究に従事。2009年より現職。著書は『いい会社とは何か』(2010年 講談社現代新書)、『日本型リーダーの研究』(2008年 日経ビジネス人文庫)、『リーダーになる極意』(2005年 PHP研究所)、訳書に『ハイフライヤー 次世代リーダーの育成法』(2002年 プレジデント社)など。論文に「『一皮むける経験』とリーダーシップ開発」(2001年『一橋ビジネスレビュー』)、「プロ経営者になるための学びのプロセス」など。

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