2023/03/14
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成功する経営者は皆、多読家。「TERRACEの本棚」
第170回
成功も失敗も、創造と革新の糧となる/『小林製薬 アイデアをヒットさせる経営』
- ビジネススキル
- 組織
- 経営
- 藤木 英雄氏 コンテンツ総局 出版監査室 出版コーディネーター
成功する経営者は皆、多読家。「TERRACEの本棚」では、成功している経営者が注目している、読んでいる書籍をご紹介してまいります。
今回は、『小林製薬 アイデアをヒットさせる経営』。本書の編集を手掛けられた、PHP研究所の藤木英雄氏に見どころを伺いました。
よい経営とはどのようなものか。どのように経営をすればよいのか――。松下幸之助が創設した出版業を営む会社に勤務する一人として、それは常に大きなテーマです。
近年は実力経営者の自伝や評伝よりも、ノウハウやビジネススキルの磨き方を伝授する本のほうが読者に望まれているようにもみえますが、どのビジネス書や経営書も、結局は、このテーマの追求がベースにあるといえます。
本書は、著者・小林一雅会長が、小林製薬という優秀な企業の中興の祖として、どのような経営を目指し、行なってきたかが凝縮された自伝的な経営ノウハウの書です。制作段階で何度もお会いし、直接お話を聞くなかで感じ得たのは、小林会長の「真摯さと謙虚さと意志の強さ」でした。そして、「根っからのマーケッター」だなということでした。
会長として、現社長に事業をしっかりと承継することが現在の役割の主体であることを強く自覚されておられたので、これまで成し遂げてきたことを一冊の本にまとめて次代に継承するというコンセプトを本書の基軸として明確に打ち出すことが可能となりました。
第8章1節では「私の大失敗を自ら反証する」と題し、実際の体験談をケーススタディとして紹介されています。「絶えざる創造と革新の追求」が同社の経営の大きなテーマですが、その挑戦につきまとう失敗を、本書でも明かされています。
また、マーケティングに優れていることがよく知られる同社ですが、第1章・第2章では、その開発秘話を惜しむことなく開陳していただきました。ご購入されるお客様にとっての「わかりやすさ」を会社全体で追求するための「仕組みづくり」に情熱を燃やし続けてきた姿が、くっきりと見えてきます。
仕事柄、多くの著名人にお会いするのですが、(昨年亡くなられた)ある有名経営者に直接、こんなことを言われました。「企業は、経営者の器より、大きくはならんのよ」と。
小林会長にお会いするたびに、その言葉が思い起こされました。この方が経営をしているから、小林製薬という会社が、20期以上も連続増益・増配を可能にする持続的成長を遂げることができたのだろうと。
日本は中小企業が多い国で、ファミリービジネスや同族経営の会社がたくさんあります。晩節を汚すオーナー経営者はよくいますし、事業承継がうまくいかない企業も山ほどあるでしょう。結果を出し続ける小林製薬の小林一雅会長による経営の実例を知ることは、多くの経営者にとって大いに資するところがあるはずです。
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